ザ・マン・イン・ザ・ハット-。間違いなく海外メディアにあだ名をつけられた最初の日本人調教師だと思う。昨年11月、ブリーダーズカップで歴史的な1日2勝を挙げた矢作芳人調教師(61)を「レーシングポスト」電子版は記事のタイトルで矢作師をそう表現した。日本競馬の強さを世界に知らしめた男のあだ名は「ザ・マン・イン・ザ・ハット」。日本語に訳せば、「帽子をかぶった男」「帽子の男」だ。

ドバイ、香港、オーストラリア、英国、フランス、米国、サウジアラビア…、世界中へ遠征し、近年は目覚ましい活躍をしている。コックスプレートを勝ったときは黒い帽子をかぶり、ブリーダーズカップディスタフとフィリー&メアターフを勝ったときは紫色(パープル)の帽子をかぶっていた。今年のドバイではベージュの帽子。日本の競馬ファンだけでなく、世界中のホースマンがその個性派トレーナーの存在を認識している。

キングエルメス(牡3、矢作)がジュライC(G1、芝直線1200メートル、9日)の最終追い切りを行った5日のニューマーケット競馬場、レースの舞台となるジュライコース(夏季限定で使われるコース)に現れた矢作師はキングエルメスとバスラットレオンの名前が入ったキャップをかぶって登場。コースを歩いて馬場の状態を確認し、自ら馬の装鞍を行い、追い切りを見届けた後、現地メディアの取材に応じている。

キングエルメスの追い切りの内容を伝える「アットザレーシズ」電子版の記事の中には「帽子の男」というあだ名が登場し、「サラブレッドデイリーニュース」の記者は自身のツイッターで「彼は帽子のコレクションで有名ですけど、靴ひももとってもカッコいい」というメッセージとともに、右がオレンジ、左が緑色の靴ひものスニーカーを履いた師の写真を投稿している。6月に行われるロイヤルアスコット開催では場内のブックメーカーたちが「今日のエリザベス女王は何色の帽子をかぶって臨場するか」という賭けを行うことで有名。海外ではホースマンたちの身だしなみも競馬の大事な文化の1つとなっている。

JRAによる馬券発売は行われないが、9日、日本時間の深夜に英国で行われるジュライC、キングエルメスの走りに多くの日本のファンが声援を送るだろう。00年のアグネスワールド以来22年ぶりに日本調教馬のジュライC制覇という快挙はなるのか。昨秋のブリーダーズカップ開催に続き、矢作厩舎の遠征に帯同している安藤裕氏(ニッカンコムでコラム「ハッピー(馬)ダイアリー」を連載中)が何色のスーツを着ているのかも、少し気になるけど…。

「帽子の男」矢作師は何色の帽子をかぶって現れるのか。夏の芝生を連想する鮮やかなグリーンか、馬主の広尾レースの服飾&レースのスポンサーであるダーレーのブルーか、矢作厩舎カラーのレッドか、それとも…、そんなところもちょっとだけ“予想”しつつ、ジュライCを楽しみたい。