凱旋門賞を制したアルピニスタは、人気種牡馬フランケル産駒では珍しい芦毛馬です。調べてみたところ、アルピニスタと同じ17年生まれのフランケル産駒は98頭が世界中でデビューしていますが、芦毛で生まれたのはこの馬のみ。同馬の母も祖母も芦毛で、この馬の牝系が脈々と受け継いできたカラーです。

アルプスをめざす登山家をイメージして名付けられたアルピニスタは、昨年春から本格化の兆しを見せて、4歳時は5戦5勝。8月のベルリン大賞(芝2400メートル)では後の凱旋門賞馬トルカータータッソを良馬場で破りG1初制覇を飾りました。その後は英国調教馬でありながらドイツのG1を狙い打ちして、9月のオイロパ賞(芝2400メートル)と11月のバイエルン大賞(芝2400メートル)に優勝。G1を3連勝してシーズンを終了しました。

その勢いは今年も続いて、シーズン初戦の7月のサンクルー大賞(芝2400メートル)と8月のヨークシャーオークス(芝2370メートル)を連勝。凱旋門賞に向け、約1カ月半の休みを与えられて大舞台に駒を進めました。

アルピニスタの母も祖母も管理したM・プレスコット師(74)が、パリロンシャン競馬場に馬を運んだのは実に21年ぶり。愛弟子のL・モリス騎手もうれしい初勝利となりました。生産者も兼ねる馬主のカーステン・ラウジングさん(70)は英国ジョッキークラブの会員で、同国で最も裕福な女性として知られる大富豪。代々、育んできた牝系に種付料の高いフランケル(交配した16年は12万5000ポンド、約2001万円)を交配したのは、母アルウィルダが現役で4勝した実力馬だったからです。

プレスコット師は海外遠征に積極的なタイプではありませんが、アルピニスタについてはオーナーの熱意に同調して凱旋門賞を意識したローテーションを組み立てました。次走は11月5日に米キーンランド競馬場で行われるG1・BCターフ(芝2400メートル)と、11月27日東京のG1ジャパンC(芝2400メートル)が挙がっているようですが、その最終判断はベテランの2人に託されるようです。【ターフライター・奥野庸介】(ニッカンスポーツ・コム/極ウマコラム「ワールドホースレーシング」)