<菊花賞>◇23日=阪神◇G1◇芝3000メートル◇3歳牡牝◇出走18頭

田辺裕信騎手(38)がアスクビクターモア(牡、田村)に騎乗して最後の1冠を奪取し、菊の大輪を咲かせた。

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「疲れたよ~。今週、菊花賞でしょ。どうせまた阪神に行くのだから、僕は今週にしたかったんですけどね」。アスクビクターモアと挑む菊花賞を4日後に控えた水曜朝、田辺騎手はそう言って、ほほ笑んだ。先週末、東京競馬場の騎乗が終わり、大阪のUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)へ日帰りで行ってきたという。同じ福島県出身、競馬学校同期で障害トップジョッキーの五十嵐雄祐騎手(38)とは家族ぐるみの付き合い。子どもたちの学校が振り替え休日になっていた先週の月曜が絶好のタイミングだった。

「コロナがあって、なかなかどこにも行くことができなかったですから。混んでいたし、疲れたけど、行って良かったなあ。(アトラクションは)新しくできたマリオ(スーパー・ニンテンドー・ワールド)を楽しみにしてました。でも、乗り物に酔ってばかりでしたよ」

いつも楽しそうな表情をしているジョッキーだ。騎手というのは肉体的にも精神的にも大変な職業。その活躍の源は家族や友人と過ごす時間なのだろう。騎乗馬のコメントも本音を包み隠さずに話してくれる。たまに冗談で笑わせつつ、競馬と真剣に向き合っている。

勝利騎手インタビュー、ゴールの瞬間、勝利を確信したかと問われると「分からなかったですね。僕もちょっと3分走った後なので、少し疲れました」とひょうひょうと答えた。仁川の直線、2度の坂越え、ハイペースで早め先頭…。最後に坂を上ってメチャメチャ苦しいはずなのに、鞍上の口元は笑っていた。“2週連続”だった関西遠征。カートに乗ったスーパーマリオの気分だったのかも…。アスクビクターモアの田辺騎手、見事なレコード勝利だった。