女王の血が花開いた。名牝の娘ジェラルディーナ(牝4、斉藤崇)がG1初制覇を果たした。

初騎乗のクリスチャン・デムーロ騎手(30)に導かれ、大外から差し切った。母はG1・7勝のジェンティルドンナ。転厩で昨年3月から引き継いだ斉藤崇史調教師(40)が頂点へ導いた。今後は状態を見て年内にもう1戦するか検討される。

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ゴールから数十秒後に再び雨が降り出した。女王継承を祝うシャワーのように。良血ジェラルディーナの馬上で、イタリアンが右手を何度も突き上げる。「ヒサシブリネ。ウレシイネ」。日本語で4年ぶりのJRA・G1制覇を喜んだ。

C・デムーロ騎手 特にプランは考えてなかった。大外枠は「難しいかな」と思ったけど、結果的に勝てて一番いい枠だった。すごくいい手応えで、いい瞬発力を見せてくれた。

先入観なく最高の結果を出した。調教も含めて初騎乗。中団の後方で折り合いに専念して、直線は芝の傷みが少ない大外へ導いて突き抜けた。欧州の極悪馬場で磨かれた手腕を道悪で遺憾なく発揮。1馬身3/4差後方の兄ミルコ(2着同着)とのデムーロ家ワンツーに「お互いにいい競馬ができてよかった」と笑った。

家族の存在も力をくれたはずだ。単身で来日した昨年はG21勝止まり。今年は妻子と母ラファエラさんを連れ、兄の一軒家にファミリー計8人で楽しく過ごす。3歳の長女マティルダちゃんはかわいい盛り。騎手一家の“良血”だからか、すでにサラブレッドにも怖がらず乗るという。

ジェンティルドンナの娘もDNAを覚醒させた。斉藤崇師は「安心して見ていられた。これだけの血統。本当に勝ててよかった」と目を細めた。解散した石坂正厩舎から引き継いだのが昨年3月。気性が激しく、同6月の転厩初戦では手綱がハミから外れて逸走するアクシデントもあったが、災いには福もあった。トレーナーは「本当にあってはいけないこと」と戒めつつ「あの時を境に折り合いが良くなった」と振り返る。

追うのは母の背中だ。今後について斉藤崇師は「体重も増えてたくましくなった。これからも楽しみ。様子を見て(年内に)もう1回いければ」と見通しを示した。今は亡き英国女王も愛したブラッドスポーツ。優れた血を引く人馬が、ぬかるんだ芝の上で大輪の花を咲かせた。【太田尚樹】

◆ジェラルディーナ ▽父 モーリス▽母 ジェンティルドンナ(ディープインパクト)▽牝4▽馬主 (有)サンデーレーシング▽調教師 斉藤崇史(栗東)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 16戦6勝▽主な勝ち鞍 22年オールカマー(G2)▽総収得賞金 2億9896万7000円▽馬名の由来 女性名より