11日の香港国際競走(シャティン競馬場)で、気になる人馬などを井上力心(よしきよ)記者が「井上 香港EYE22」で取り上げる。第2回は香港スプリント(G1、芝1200メートル)でナランフレグ(牡6、宗像)に騎乗する丸田恭介騎手(36)と、管理する宗像義忠調教師(68)の師弟コンビ。春のスプリント王で海外G1制覇に挑む。

ナランフレグが勝った3月の高松宮記念は、デビュー16年目にしてG1初Vを果たした丸田騎手がインタビューで涙目になり、胸を打たれた。

07年3月からほぼ11年、宗像厩舎に所属した。今度は師弟コンビとして初めて海を渡る。トレーナーは「海外で一緒に挑めるのはうれしいですよ。現地での騎乗経験がなく、慣れていないので難しいとは思うけど、本人も映像などを見ていろいろ研究しているからね。いい結果を出せれば」と期待する。師の言葉を丸田騎手に伝えると「先生(宗像師)がうれしいと言っているなら、僕もうれしいです」と照れくさそうだった。厩舎から乗り役の助手は派遣しない。香港での調教騎乗は毎日、鞍上に一任。厚い信頼がある。

丸田騎手の海外騎乗は14年の豪ドンカスターマイル以来。ハナズゴールの手綱を取り、最後方から追い込んでの6着だった。「1週間滞在して、馬場などのいろんな違いを感じながらレースに乗っていた。もう少しレースまでの過程で、準備できればよかったとも思います。そこで得たことも生かしてしっかり準備して臨みたい」と8年前の経験を無駄にはしない。ライバル馬や、シャティンのレースを研究。現地入り後は、調教以外にも馬場を入念にチェックする予定だ。

相棒のナランフレグは順調だ。11月30日の国内最終追いは、美浦ウッドでラスト1ハロン11秒1を軽々とマークした。師は「よかった。追走がうまくいってほしいね。楽しみです」と状態には満足そう。同23日の追い切りで感触を確かめた丸田騎手は「いい負荷をかけて前回より1段上げていける」とうなずいた。春の歓喜を香港で…。師弟の絆に注目だ。

■道中の追走が鍵

【井上チェック】

香港勢が手ごわい。4月のチェアマンズスプリントプライズを連覇したウェリントン、同馬を退け前哨戦のジョッキークラブスプリントを勝ったラッキースワイニーズの2頭は勝ち負けの存在だ。

野芝に洋芝をオーバーシードしていることもあり、日本のような1分7秒台前半、6秒台の高速決着は考えにくい。丸田騎手は「毎年ボコボコではないし、内も気にならない。最初から外を回すイメージはない」と頭に描く。ほぼ平たんなコースのため、各馬はある程度前で運びたいところ。しまい確実に伸びてくるナランフレグは、道中の追走が鍵になる。