ダービー3勝、JRA通算2613勝の名手・福永祐一騎手(45)が8日、2023年度のJRA新規調教師試験に合格した。これにより、来年2月末で騎手を引退することになる。合格発表後、同日午後からJRA栗東トレーニングセンター事務所で記者会見が行われた。

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-今の気持ちは

福永騎手 大変うれしく思いますし、いよいよなんだとワクワクしています。家族もそうですが、たくさんの方が今回のチャレンジを応援してくれて、サポートしてくれました。その方々にいい報告ができて良かったなと思いますし、改めて感謝の気持ちを伝えたいです。

-調教師を目指したきっかけは

福永 何かで1番になりたいという気持ちを持って、この世界に入ってきました。その中で勝つことはもちろんですが、何よりも競走馬の魅力に魅せられ、競走馬が変化していく過程などを実際にそばで体感していくうちに、もっと1頭の馬に深く関わりたい、責任を持ってその馬の馬生を豊かにする作業をしたいという気持ちにかられました。それだけではなく、けがのこともありますし、親のこと、家族のこともあります。でも、いちばんは騎手よりやりたい仕事が見つかったこと。騎手という最高の仕事を続けられているなかで、それでももっとやりたいことが見つかったってことが、いちばん大きなポイントです。騎手が楽しいという気持ちが下がっていったことはないです。むしろ上がっていくなかで、さらに調教師になりたいという気持ちが上回りました。

-目標とするレース、調教師は

福永 目標とするレースは特には定めていないですが、馬にとってベストな選択ができる調教師でありたいと思います。目標とする調教師も定めているわけではないですが、騎手として、多くのトップトレーナーとの関わりを持たせていただきましたし、そういった方々の技術を目の当たりにしてきましたので、自分なりに参考にしながら、自分のスタイルを築き上げていきたいなと思います。

-開業までのプランは

福永 来年の2月末日まで騎手免許を有していますので、そこまでは騎乗します。それ以降は、海外も含め、生産牧場、育成牧場など、いろいろなところを見て、今後の厩舎経営のために必要な経験を積んでいきたいなと考えています。

-いつから調教師を志し、どんな日々だったのか

福永 調教師を目指して勉強を始めたのは、今年に入ってからです。勉強に関しても自分自身が頑張った、苦労したというよりは、たくさんの方が支えてくださって、サポートしてくださいましたからね。勉強することが全く苦じゃなかったです。逆に言えば、たくさんの知識が増えましたので、騎手としても騎乗する上で違ったアプローチができるようになったと思います。

-調教師の魅力は

福永 騎手としての立場より、競走馬により深く関わることができることです。競走馬って初めから強い馬ってそう多くないですからね。いろいろなところを修正しながら一流の競走馬に仕上げていき、大成させていく。そういった過程をコントレイルで経験させていただきましたし、普段、藤原英厩舎、友道厩舎を中心に騎乗させてもらっていく中で、しっかりとコミュニケーションをとって、1頭の馬をG1馬に育てていく過程を経験させてもらいました。1頭の馬生により深く関われる。そういったところから、その道にすごく魅力を感じました。

-今まで支えてくれた恩師への思いは

本当に北橋先生と、亡くなられた瀬戸口先生のおかげで、ここまでジョッキーを続けられていると思います。坂口正大先生もそうですが、たくさんの方が応援してくれて、自分を育ててくれました。だからこそ、そういった方々が、祐一を育てたんだって誇りに思ってもらえるようなジョッキーになりたいと思ってずっとやってきました。そこは調教師という立場になっても継続して、支えてくださった方が誇れるようなホースマンでありたいなと思っています。

-思い出のレースは

福永 数多くのレースを勝たせていただきましたし、なかなか1つに決めるのは難しいですが、やはり3冠を達成できたというのは大きいです。また、最初にダービーを勝たせてくれたワグネリアンや、最初の(ダービーで騎乗した)キングヘイローもそうですし、言い出したらきりがないですね。本当に多くの馬が自分を育ててくれました。

-思い出の馬は

福永 無敗の3冠馬って歴史上、3頭しかいないので、その1頭(コントレイル)に騎乗することができたのが大きな誇りです。

-今後の騎手生活について

福永 来年の3月で免許が切り替わるので、そこまでの騎乗とはなりますが、自分が調教師の試験を受けたと知っている関係者が多い中で、変わらずG1を含めた騎乗依頼を続けてくださっていますからね。今までと変わらず全力を尽くして、最善の結果を出せるようにしたいです。あと、たくさんの方が応援してくださっていますし、ひとりでも多くの方に見ていただけたらなと思います。

-父・洋一氏について

福永 父がいなければこの世界に足を踏み入れることはなかったですし、福永洋一という偉大な騎手がいたからこそ、たくさんの方にサポートしてもらえたと思います。父なくしては、今の自分はなかったです。今も健康ではいますし、3月までの騎乗を無事に勤め上げて、しっかりいい報告ができればと思います。

-調教師になる上での自分の強みは

福永 多くのG1馬に乗ってきたことだと思います。さまざまなG1を勝たせてもらいましたし、そういったレースで勝てる馬の背中を知っている。また、どういった過程を踏んでG1を勝つことができたのか、その経験ができているのは非常に大きな強みだと思っています。それは調教師になっても存分に生かせると思います。

-厩舎スタッフについて

福永 馬にとってベストな選択ができる厩舎を、というテーマを掲げているので、一緒に働き、一緒に馬を作っていく仲間たちにもそういった意識をもってやってほしいと思います。馬は生き物なので、これが正解って断定できるものが少ないですが、そういったものを探し続けて、ベストな方法、手段、調教などを馬にほどこしていけるチームでありたいと思います。そういう楽しさを(チームに)提供するのも自分の仕事だと思いますし、少しでも興味をもってもらえたら、そういう形にしていければと思います。