2022年も多くの名馬、ホースマンが天国へと旅立った。今もなお有馬記念レコードとして残る勝ち時計をマークしたゼンノロブロイ、同じ藤沢和厩舎所属で90年代最強マイラーのタイキシャトル、そして福永祐一騎手に悲願のダービータイトルをもたらしたワグネリアン…。ファンの記憶に残る名馬、名調教師の死を悼むとともに、その栄光を振り返る。

■ゼンノロブロイ(牡22)9月2日

繋養(けいよう)先の村上欽哉牧場(北海道新冠町)で心不全のため死んだ。8月に入ってから心臓機能の低下が見られ、この日朝に起き上がれなくなり、苦しむ様子もなく息を引き取ったという。訃報を聞いた時、管理した藤沢和雄元調教師は「調教では難しいところもあったけど、普段はそんなことはなかった。タフに走ってくれて、素晴らしい競走馬だったと思います。種牡馬になっても初年度産駒からオークス馬(サンテミリオン)が出たし、私の厩舎ではペルーサやルルーシュ、バウンスシャッセが活躍してくれました。いろいろと力になってくれたし、思い出深い存在です」とコメントを寄せている。

00年白老ファーム生まれのサンデーサイレンス産駒。03年にデビューし、同年の青葉賞で重賞初制覇。ダービーではネオユニヴァースの2着に入った。秋も菊花賞4着、有馬記念3着とあと1歩G1タイトルに届かなかったが、古馬になって本格化。ひとつ上のシンボリクリスエスの後を継ぐ厩舎の看板馬に成長した。

04年秋はペリエ騎手を背に天皇賞・秋、ジャパンC、有馬記念を3連勝。逃げるタップダンスシチーをゴール前できっちり捉えた有馬記念の勝ち時計2分29秒5は前年のシンボリクリスエスのタイムを1秒も短縮し、今でも有馬記念レコードとして残っている。秋の古馬3冠は00年テイエムオペラオー以来2頭目で、年度代表馬に選出された。

5歳時は勝ち星こそ挙げられなかったが、英G1インターナショナルSでエレクトロキューショニストの首差2着、天皇賞・秋2着、JC3着と地力の高さを示した。引退戦の有馬記念は8着。通算20戦7勝(うち海外1戦0勝)。総収得賞金11億3565万1500円(うち海外2004万3500円)。種牡馬入り後は10年オークス馬サンテミリオンなどの活躍馬を出した。