1日付で調教師に転身した福永祐一師(46)が4日、阪神競馬場で「騎手引退式」を行った。今後は、25日のドバイ国際競走に出走するシャフリヤールやヴァンドギャルドなどの調教に現地で騎乗。国内外の生産地、育成牧場を訪ねて研さんを積み、調教師としての歩みを始める。

 ◇  ◇  ◇

誰しも40代になれば、頭脳の衰えを実感するはずだ。42歳の僕も今まさに痛感している。

では、46歳の福永祐一“新調教師”は、いかにして難関の調教師試験で一発合格を果たしたのか?

昨年12月9日の栗東トレセン。合格発表から一夜明けた名手と、ベンチに座って2人で話す機会があった。そこでさっそく、気になっていた学習法について質問した。

「勉強を始める1年ぐらい前から『勉強法』を勉強した」

試験勉強に取り組み始めたのが昨年1月だから、時期は21年の年明けか。まず手にとったのが、脳科学の本だったという。40代中盤を迎えた脳細胞に、どうやったら効率良く知識を詰め込めるか。そのノウハウをかき集めた。

出した答えは短時間集中だった。勉強は1日数時間まで。それが集中力の限界だからだ。気が散ることを防ぐため、スマートフォンは電源をオフに。「朝型」だと判定されたため、午前の早い時間帯に全神経を研ぎ澄ませた。

「勉強は楽しかった」

もともとが理論派でもあり、馬についての知識欲が強く、前向きに取り組めたのも大きかったようだ。本年度の調教師試験は1次試験受験者が133人、2次試験合格者が7人。競争率約20倍の難関を見事に一発で突破した。

「1回目で受かるとは思ってなかった。記憶の定着を考えると(合格するのは)2回目かなと思ったけどね。1回目は(騎乗数を減らしたりすることなく)サイクルを変えずに受けると決めていたから」

がむしゃらに勉強漬けになるのではなく、効率的なアプローチで目標を達成した。さすがは「努力の天才」。その騎手キャリアにおいても、騎乗フォームについてコーチに指導を受けるなど、固定観念にとらわれない発想をもとに頂点へ上り詰めた。調教師としても、常識に縛られることのない「ユーイチ流」を見せてくれるに違いない。【中央競馬担当=太田尚樹】