10日土曜に行われたG1ベルモントS(ベルモントパーク、ダート2400メートル)は、前走のG3ピーターパンSを制し、追加登録して参戦したアルカンジェロ(牡3、父アロゲート)が、1番人気のフォルテを抑えて優勝しました。

最初の2冠に出ていない馬による優勝は00年以降で8頭目。J・カステリャーノ騎手はバーナーディニでの06年プリークネスS、今年のメイジでのケンタッキーダービーに続き、これで3冠完全制覇。管理するJ・アントヌッチ調教師は、米3冠競走の勝ち馬を送った最初の女性トレーナーとなりました。

3冠競走は19年以降、すべてのレースで勝ち馬が変わり(最近5年は2冠馬もなし)、ここ3年は3冠皆勤馬も見当たらず。わずか5週間のうちに完結する3冠の厳しさをうかがわせています。

アルカンジェロは父がBCクラシックやドバイワールドCなどG1・4勝のアロゲート。母系は名牝ベストインショウにさかのぼり、近親に米最優秀3歳牝馬のラグストゥリッチズや、本邦種牡馬のカジノドライヴを持つ良血ながら、1歳時のセリで落札された価格はわずか3万5000ドル(当時のレートで約385万円)でした。

アロゲートの19年の種付料(7万5000ドル)の半額に満たない額で取引されたのは、彼が生まれつき片方の睾丸(こうがん)が体内にとどまる潜在精巣(陰睾)の馬だったから、と伝えられています。

陰睾の馬は牡馬として扱われるため、去勢馬の出走を認めている米国3冠はもちろん(去勢馬に出走資格のない)欧州や日本のダービーにも出走できますが、将来、種牡馬になれるかどうかはケース・バイ・ケース。

アルカンジェロの母の父タピットの祖となるエーピーインディは陰睾で産まれたものの手術を受けて名馬としての実績を残し、米国を代表する大種牡馬になっています。【ターフライター・奥野庸介】(ニッカンスポーツ・コム/極ウマコラム「ワールドホースレーシング」