武豊騎手(54)と武幸四郎調教師(44)の兄弟タッグが北都でタイトル奪取だ。

兄が騎乗した6番人気セキフウ(牡4、武幸)が直線差し切って重賞2勝目、JRAでは初タイトルを獲得した。勝ちタイムは1分42秒8。兄弟タッグのJRA重賞制覇は3度目となった。今後は昨年3着のコリアC(G3、ダート1800メートル、9月10日=ソウル)に選出されれば、次走候補の1つになる。

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白の勝負服を泥で真っ黒にした武豊騎手が、セキフウとともにファンの祝福に応えながら引き揚げてきた。道中は後方待機。勝負どころで外を回って進出するとメンバー最速上がり35秒5の脚を繰り出し、直線で一気に突き抜けた。弟の幸四郎師が管理する馬との初コンビ。見事な一発回答だった。

鞍上は「少しもまれ弱いので、最後外に出すというのが大きなテーマでした。4角の手応えも良かったし、すごくいい脚でしたね。今日の感じなら、まだまだやれる馬だと思います」とねぎらった。持ち合わせる気難しさが出ないように、馬のリズム重視。その手綱さばきが、パートナーの能力をフルに引き出した。

この1勝で自身が持つJRA最多重賞勝利記録を356に伸ばした。エルムSは97年バトルライン以来26年ぶり。「そんなになるんだね。やっぱりうれしいですよ」と笑みを浮かべた。今年の夏競馬初の重賞タイトルには「僕自身、久々に重賞を勝ててうれしい」。レジェンドとはいえ、勝利の味は何度でも飽きないようだ。

武幸師は馬の頑張り、兄のエスコートに目を細めた。「勝つ時は鮮やかですね。張り切って仕上げると硬くなるので、追い切りをあまりやらなかったのもよかったのかな。展開が向いたというよりも、しっかり伸びてますからね」と自信を深めていた。今後はコリアCのメンバーに選出されれば、昨年3着のリベンジが視野に入る。北の大地でつかんだ重賞2勝目。セキフウがダート路線を熱く盛り上げていく。【井上力心】

◆武豊騎手、武幸四郎調教師による兄弟JRA重賞制覇 21年ファンタジーS(ウォーターナビレラ)、今年の日刊スポーツ賞シンザン記念(ライトクオンタム)と2回勝ち、今回のエルムSで3勝目。なお武幸師のJRA重賞4勝のうち3勝を兄の豊騎手で挙げている。

◆セキフウ ▽父 ヘニーヒューズ▽母 シヤボナ(キングマンボ)▽牡4▽馬主 中辻明▽調教師 武幸四郎(栗東)▽生産者 バンブー牧場(北海道浦河町)▽戦績 19戦4勝(うち地方3戦1勝、海外3戦0勝)▽総収得賞金 1億7510万7100円(うち地方3420万円、海外4916万7100円)▽主な勝ち鞍 21年兵庫JG(Jpn2)▽馬名の由来 戚風(中国語でシフォンケーキ)の日本語読み