アイドルホースのメイケイエール(牝5、武英)が「全米デビュー」を迎える。

現地4日(日本時間5日早朝)にサンタアニタパーク競馬場で開催されるBCフィリー&メアスプリント(G1、ダート1400メートル)に挑戦する。愛らしいルックスとまじめすぎる走りから、G1未勝利ながら写真集2冊が刊行されるなど大人気の“日本代表”。連載「エール to USA」(全3回)で、携わるホースマン3人の思いに迫る。第1回は主戦の池添謙一騎手(44)。愛馬とともに憧れの舞台に立つ。

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忘れられない景色がある。20世紀が終わろうとしていた00年12月。21歳の池添騎手は、米西海岸で太平洋からの海風に吹かれていた。そこがサンタアニタ競馬場だった。

「ユタカさん(武豊騎手)について行ったことがあるんです。こうして戻ってこられるなんて…」

年末年始に米国での騎乗を恒例としていた武豊騎手に同行した。レースを観戦して、調教にもまたがった。ただ、実戦で騎乗することはできなかった。あれから23年。同じ場所で全米最高のステージに立つ。

「競馬学校生の頃から海外のレースを見てきました。欧州なら凱旋門賞、キングジョージ、ロイヤルアスコット。米国ならケンタッキーダービー、ブリーダーズカップ。いつか乗りたいと思っていました。今回、それに騎乗するという1つの夢はかないますから」

丸刈り頭の頃から憧れてきた舞台だ。連れてきてくれたメイケイエールは、一昨年の10月から手綱を託された。ともに重賞3勝を挙げたが、G1にはまだ手が届いていない。幾多の癖馬を乗りこなしてきた名手をして「あのタイプは初めて」と言わしめるじゃじゃ馬。騎手として後輩だった武英師、調整役の荻野助手、担当する吉田助手と試行錯誤を重ね、エスコートのために最善を尽くしてきた。そして今回、選んだのはダート戦。本場米国の壁は高いが、胸には勝算がある。

「サンタアニタのダートは粘土質ですし、レースごとに水をまいて締まった馬場になるので、いいと思います。すごく楽しみ。勝負になると思います」

3冠馬オルフェーヴルとは、2度の凱旋門賞遠征でともに騎乗がかなわなかった。日本でテレビの画面越しに応援したものの「乗れないのは歯がゆさしかないです」と思いを口にしていた。今度は愛馬と一緒に挑戦できる。目指すのは、さらに大きな夢。そう、世界の頂点に立つことだ。【太田尚樹】