アイドルホースのメイケイエール(牝5、武英)が「全米デビュー」を迎える。4日(日本時間5日早朝)にサンタアニタパーク競馬場で開催されるBCフィリー&メアスプリント(G1、ダート1400メートル)に挑戦する。愛らしいルックスとまじめすぎる走りから、G1未勝利ながら写真集2冊が刊行されるなど大人気の“日本代表”。連載「エール to USA」(全3回)では、携わるホースマン3人の思いに迫る。最終回は担当の吉田貴昭調教助手。うるわしの「ツンデレ娘」と世界に挑む。

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手がかかる子ほどかわいい。アイドルを見守るマネジャーのように、吉田助手はメイケイエールに寄り添ってきた。走りっぷりから荒い気性と勘違いされがちだが、トレセンでの立ち居振る舞いは実におとなしい。その素顔は「ツンデレ」だという。

「その『ツン』の強度が…。もう少し優しくなってほしいですね(笑い)。もう『寄るな!』という雰囲気を出しますから」

ご機嫌が斜めの時は、近寄ると歯を鳴らして威嚇するという。その愛くるしい顔つきからは想像できないが…。一方で「デレ」の時はかわいいばかりだ。

「甘えてくる時は頭を下げてきますね。かゆいところをブラッシングしてあげると、鼻の下が伸びてきます。そうやって示してくれるので、分かりやすいですね」

そんな愛馬はホースマン人生を変えた存在でもある。出会うまでは海外にも行ったことがなかった。昨年12月の香港遠征に同行する際には、初めてパスポートを取得した。

「いろんな経験をさせてもらっていますね。G1の1番人気も初めてでしたし、海外へ行くのも初めてでしたから」

5歳秋を迎え、だんだん母になる時も近づいてきた。2歳夏に出会って3年余り。一緒に過ごせる時間は、もうそれほど長くはない。

「今の時代は、1頭にずっと携わることが少なくなってきています。その分も(メイケイエールには)愛着がすごいです。個性も強烈ですから。まずは無事にいってほしいですね」

念願のG1タイトルを求め、固い絆で結ばれた人馬は再び海を渡った。いざ世界屈指の大舞台へ。太平洋のかなたから届くエールを背に受け、愛されしアイドルが女王への転身をはかる。(おわり)