「感動しましたよ。テレビで見ていて、涙が出そうになりました」。今朝の美浦トレセン、南スタンドで若手調教師がそう口にしました。デルマソトガケが2着、ウシュバテソーロが5着。「ダートの世界最高峰」のBCクラシック。今年はその頂上に、日本馬が限りなく近づいた年でした。

有力馬の故障、回避が相次ぎ、例年に比べれば、手薄なメンバーだったとはいえ、アメリカ競馬らしいハイペースのサバイバルレース。勝ったホワイトアバリオは昨年、フロリダダービーを勝って、ケンタッキーダービーに挑み、今年はサラトガのホイットニーSを圧勝している強豪でした。

美浦トレセンで日々シャッターを切っている顔見知りのカメラマンは言いました。「俺、ウシュバテソーロに勝ってほしかったよ。勝ってほしかったんだけどさ…、終わってみれば、やっぱり、デルマソトガケ、良かったもんなー。あの追い切り、そのままの結果になっちゃったから。デルマソトガケ、すごく調子が良かったし、フロックでもなんでもないと思う。惜しかったよね。感動したなあ…」。美浦ウッドチップコースの国内最終追い切りの併せ馬を思い起こしながら、そう言いました。

ドバイワールドC覇者として人気を背負ったウシュバテソーロ、春はケンタッキーダービーにもチャレンジしたUAEダービー馬デルマソトガケ。2頭とも、敗れはしましたが、全力を出し切ったグッドルーザーでした。ともに来年も現役続行で、再びドバイ遠征の予定。強力な北米の馬や地元勢が中心視されてきたこれまでとは違い、BCクラシックを好走した日本のダートホースがドバイワールドCに主役として乗り込んでいく日が楽しみです。

2016年にラニがUAEダービーを初めて制し、22年クラウンプライド、今年デルマソトガケと連勝中で、日本馬は過去7年で3勝。来年はUAEダービーをどの馬が勝つのか、どんな馬が遠征するのか。2歳戦のダート競走を見ていて、そういう気持ちにさせてもらえます。国内で創設初年度の「3歳ダート3冠競走」を狙っていく馬はどの馬か、と。そちらも楽しみです。大井からは今年のマンダリンヒーローに続き、サンタアニタダービーに挑戦する馬が出てくるのか、その先のケンタッキーダービー参戦を果たす馬は出てくるのか。想像は膨らみます。

来年のBC開催は今年と同じく西海岸のデルマー競馬場が舞台。1年後、また感動を届けてもらえますように…。

火曜の美浦は強風が吹き荒れましたが、今朝の美浦は風もなく、素晴らしい好天。週末のレースへ向け、多くの馬が追い切られていきました。今週末はエリザベス女王杯、京都ジャンプS、デイリー杯2歳S、武蔵野S、福島記念など大きなレースがあります。日々の気温差が激しいので、体調管理をしっかりしながら、競馬を楽しみたいですね。【木南友輔】