1999年マイルCSの覇者エアジハード(せん)は、28歳になった現在、北海道浦河町の王蔵牧場で余生を過ごしている。同場のスタッフ竹内里紗(35)が、オーナーとしてつきっきりで世話をしている。近隣のコンビニエンスストアで、バイトも掛け持ちしながらカイバ代の足しにしている。「ジハードが好きなので。カイバは自分で購入しています。仕事は土日が休みなので、セイコーマートで働いているんです」。

ジハードが口にするカイバは輸入牧草のため、通常よりやや割高。円安も直撃して、月に5000円から1万円かかるという。牧場からの給料では足りないケースもあり、バイトでカバーしている。牧草を切る際に出る粉が低価格で販売されているため、それも購入して与えている。カイバだけではなく、治療費や削蹄にも費用はかかかるが、竹内の献身的な働きもあり、28歳でも肌の張り艶は抜群だ。

出会いはジハードが十勝軽種馬農業協同組合種馬所にいた、約10年前だ。「ふるさと案内所のコラムに紹介されていて、真っ白な雪の中に栗毛のエアジハードの写真がきれいでした」。当時は、リンドシェーバー、ダイナマイトダディ、フサイチソニック(現在もけい養中)もけい養されていた。保育士をしながら十勝に通ったが、馬の仕事を捨てきれずに三石のレディースツアーに参加。生産牧場での仕事に興味を持ち、移住した。小国スティーブルで働きながら、月2回ほどのペースで十勝にも通った。通う中で、ジハードの引き取りを持ちかけられた。

命を預かることへ葛藤もあったというが、社長の快諾もあり2019年夏から小国スティーブルでけい養。昨年5月に竹内が王蔵牧場に移る際、ジハードも移動してきた。「放牧地に屋根があり、暑い夏場も外に出しやすいんです」。

1999年のマイル王は、今もたっぷりの愛情を受けて北海道で余生を過ごしている。【高橋悟史】