なんたる強さだ。1番人気のジャンタルマンタル(牡、高野)がデビューから3戦3勝で2歳マイル路線の頂点に立った。

中団からインを突いて、残り400メートル付近で先頭に立つ堂々たる勝ちっぷり。テン乗りで結果を出した川田将雅騎手(38)は、今年のJRA・G1・5勝目を挙げた。

   ◇   ◇   ◇

迷わない。冬の西日に照らされた4コーナーで、前方のラチ沿いに視界が開けた。すかさず動く。川田騎手はわずかに手綱を動かし、中団から前へ進んだ。ゴールまで残り600メートル。早すぎるかに見えた決断が、頂点への道を切り開いた。

「いい形にならなさそうだったので、勝負どころだと思って、早めに進路を確保して動いていきました。このままゴールまで連れて行けば、負けることはないと信じていました。攻めた競馬で、最後までしっかり脚を使ってくれました」

テン乗りでも、王道の競馬で勝てる能力を見抜いていた。最内を突き、ラスト400メートルでジャンタルマンタルが先頭に立つ。芝の傷んでいないコース中央へ導き、残る16頭を突き放して独走する。1馬身4分の1の着差以上の完勝。左手で首筋をたたいてねぎらった。

その手腕は、かねて高野師から「位置取りの鬼」と称される。名手の思考は「勝ちきること」の結論ありき。ゴールから逆算してレースを組み立てる。トレーナーは「ポジションは決して楽ではなかった。スペースを突いて突いての形で、気がついたらいい位置にいた」とたたえた。

好騎乗に応えた逸材もまた称賛に値する。鞍上は「これからもっと成長を伴える馬」とした上で「性格がとてもいい。課題らしい課題は特にないです」と評価。堂々たる勝ちっぷりは、身体能力と操縦性の結実にほかならない。

このままマイルを極めるか、クラシックへ打って出るか。進路は未定だが、日本で供用されることが決まった父パレスマリスはダート2400メートルのベルモントSを制しており、高野師は「血統にも長い距離をこなせる背景がある。もう少し延ばしても上手に走れるように、厩舎として取り組んでいかなければ」と意気込む。無敗王者の頭上にあったのは、冬晴れの透き通った青空。それは洋々たる未来を表しているように見えた。【太田尚樹】

◆ジャンタルマンタル ▽父 パレスマリス▽母 インディアマントゥアナ(ウィルバーン)▽牡2▽馬主 (有)社台レースホース▽調教師 高野友和(栗東)▽生産者 社台ファーム(北海道千歳市)▽戦績 3戦3勝▽総収得賞金 1億1681万円▽主な勝ち鞍 23年デイリー杯2歳S(G2)▽馬名の由来 インドにある天体観測施設