世界を取ったコンビはやはり強い。川田騎手騎乗で1・7倍と圧倒的人気に推されたウシュバテソーロ(牡6、高木)が外から末脚一閃(いっせん)で同馬主のウィルソンテソーロを差し切り東京大賞典連覇を果たした。勝ち時計は2分7秒3。海外帰り、白い砂に入れ替わった大井の舞台。不安を一掃する力強い走りに大井がふるえた。今後は来年のサウジC(G1、ダート1800メートル、2月24日=キングアブドゥルアジーズ)からドバイワールドC(G1、ダート2000メートル、3月30日=メイダン)連覇への道を掲げた。

世界のダート王にとって国内には敵はいない。ウシュバテソーロが大井の直線の外を一気に駆け抜けた。7番手から進出し、前との差はかなりある。しかし、杞憂(きゆう)は一瞬だった。残り300メートル付近から川田騎手がムチを振るうと切れに切れた。昨年制した時の上がり37秒2をコンマ2秒上回る末脚を繰り出した。内には逃げに打って出た同じ緑と黄色の勝負服ウィルソンテソーロが粘っている。しかし脚色は全く違う。1完歩ずつ確実に追い詰めて、ゴール前で半馬身差きっちりと差し切った。 このレースは初勝利となった川田騎手は「春のドバイWCを勝った馬なので、それにふさわしい走りができればというところでした。自信を持っていますので、ゴールまでには届くなと思っていましたが、ウィルソンテソーロも素晴らしい走りをしていたと思います」と相棒の力を信じていた上での完勝だった。

価値のある連覇だ。BCクラシック5着からのローテ。中間の検疫、入れ替わった大井の白い砂。同じレースでも昨年とは全く違う環境だった。そんな不安を王者の貫禄で払拭した。昨年以上のインパクトを残した走りだった。高木師は「入厩して急仕上げだったとは思います。でも海外を2回経験して馬もどっしりしてきた部分もある。砂も船橋を経験しているので大丈夫なのかなと。さすがの脚でした」。陣営の期待に見事応えた。

さえぎるものは何もない。来年も現役続行を掲げた。師は「順調ならサウジからドバイに行きたいと思っています」と展望を示した。日本ダート界の総決算を連覇した馬が、来年のドバイでも連覇を狙いに行く。日本で強いダート馬は世界でも強い。それを証明してくれる存在がウシュバテソーロだ。【舟元祐二】

■千代田牧場飯田専務も感無量

ウシュバテソーロを生産した千代田牧場の飯田貴大専務は笑顔で表彰台に上がった。「陣営の皆さんと一緒でホッとした気持ちです。直線はもう言葉にならなかったです。必ず差し切ってくれると思って見ていました」と感無量の様子。3月のドバイWC制覇を現地で見届け、11月には正剛社長とともに米国でBCクラシック挑戦を見守った。「世界中に連れて行ってくれてありがとうという気持ちですが、ウシュバのような強い馬をまた新たに作っていかなければと思いました」と気を引き締めていた。

◆ウシュバテソーロ ▽父 オルフェーヴル▽母 ミルフィアタッチ(キングカメハメハ)▽牡6▽馬主 了徳寺健二ホールディングス(株)▽調教師 高木登(美浦)▽生産者 千代田牧場(北海道新ひだか町)▽戦績 32戦11勝(うち地方4戦4勝、海外2戦1勝)▽総収得賞金 13億8139万9800円(うち地方3億2000万円、海外9億4151万5800円)▽主な勝ち鞍 22年東京大賞典(G1)、23年川崎記念(Jpn1)、ドバイワールドC(G1)、日本テレビ盃(Jpn2)▽馬名の由来 山の名+冠名

◆東京大賞典連覇 ウシュバテソーロは史上5頭目。これまでの04・05年アジュディミツオー(内田博)、10・11年スマートファルコン(武豊)、13・14年ホッコータルマエ(幸)、18~21年に4連覇のオメガパフューム(M・デムーロ)はすべて同じ騎手。昨年は横山和→今年は川田と、違う騎手での連覇は初めて。