まさかの航空機遅延により、予定より遅れて現地に移動中の木南友輔記者の連載「キナミの帝王~サウジにふたたび編」は、サウジアラビアとつながりの深い米国の芦毛馬2頭をピックアップ。ファイサル殿下が一部所有権を持ったホワイトアバリオ(牡5、R・ダトローJr)、サウジの皇太子にちなんで名付けられたサウジクラウン(牡4、B・コックス)は、その実力はもちろん、モチベーションの高さも脅威。日本勢の前に厚い壁として立ちふさがる。

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読者がこの記事を読んでいる頃にはおそらくサウジアラビアの首都リヤドに着いているはず…。当初は現地時間の火曜未明に到着する予定が飛行機の遅延で成田に1泊。火曜朝の取材は不可能で、今は中東の経由地で原稿を送っているところ。水曜朝からキングアブドゥルアジーズ競馬場で取材することになっている。

あらためて、サウジとは…。昨年3月、ドバイワールドカップデーを取材したとき、ドバイに駐在している大学の野球部の仲間に会った。重機を扱う商社マンの彼は言った。「ドバイはハブ(拠点)。仕事はサウジアラビアに行くことが多いんだ。あの国はアラブの盟主。今は砂漠のど真ん中にとんでもない未来都市を作ろうとしているんだ」。

聖地メッカがあり、以前は観光で入ることができなかった国。世界最高賞金額のサウジC創設で世界の競馬界に新規参入してきたイメージだが…。怪物フランケル、凱旋門賞連覇のエネイブルなどを所有したアブドゥラ殿下(ジャドモントファーム)はサウジアラビアの王族。一昨年、昨年とサウジCで2年連続2着のカントリーグラマーや21年のケンタッキーダービーで1位入線のメディーナスピリット(薬物検査陽性のため失格)を所有するゼダンレーシングもサウジ出身のオーナー。サウジと競馬界、特に米国勢とのつながりをさまざまな点で感じる。

サウジアラビアとのつながりの深さで言えば、今年はなんと言っても、ホワイトアバリオ。昨年のBCクラシックを制した芦毛馬は先月、権利の一部をファイサル殿下が買い取ったことが発表され、第2回のサウジCを制したミシュリフと同じ勝負服で今回、出走することになっている。

そして、もう1頭。米国から来るその名もサウジクラウン。こちらはオーナーがインタビューで「サウジクラウンの名前は皇太子(Crown prince)にちなんで名付けました。もし勝つことができれば、最も重要なことは賞金やトロフィーではなく、私たちのリーダーと握手できる喜びでしょう」と熱く語っている。超高額賞金よりも大事って、すごい意気込み…。さあ、水曜朝、無事にキングアブドゥルアジーズ競馬場で取材ができていますように。(つづく)

◆米国馬のサウジC成績 第1回の20年は5頭が参加。フロリダダービーなどG1・3勝を挙げていたマキシマムセキュリティが勝利した。ただし、その後に管理するJ・サーヴィス師が禁止薬物投与で起訴され、有罪に。主催者のサウジアラビアジョッキークラブは同馬の優勝、賞金の扱いを現在も審理中。同年2着も米国のミッドナイトビズーだった。以降、米国馬の優勝はないが21年2着シャーラタン、22・23年2着カントリーグラマーと常に連対馬が出ている。