今週はクラシック第2弾の皐月賞(G1、芝2000メートル)が14日に中山競馬場で行われる。

絶対的な中心馬不在で混戦模様の中、1勝馬の身でトライアルのディープインパクト記念弥生賞を制したコスモキュランダ(牡3、加藤士)に勢いがある。

本馬を生産したビッグレッドファームの調教施設の1つである真歌トレーニングパーク(北海道新ひだか町)で育成を担当した騎乗スタッフの赤沼健太郎さんは、騎乗訓練をスタートさせる1歳秋の時点で、天性の資質を感じ取っていた。

「馴致(じゅんち)を始めてすぐに、並の馬ではないという印象でした。鞍を着けて乗ってすぐに、いい背中と感じました。うるさいところがなくて、誰でも乗れる馬でした」

1500メートルの屋根付き坂路コースでは、同期でやはり評判の高かった馬と併せることが多かった。またこの世代から、早い段階でトレッドミルを併用する調教法を取り入れたため、「例年以上の運動量はある」という。ビッグレッドファームらしく厳しく鍛錬されてきた。

年が明けて2歳を迎えるまで順調に調教を積まれたが、その後の成長曲線は横ばいだったという。

「ただ、もう1つ2つギアが上がりそうなイメージはありました」

牧場から巣立って、春に美浦トレセンに移動。23年6月東京の新馬戦でデビューした時は、12頭立て5番人気に支持された。結果は最後方のまま最下位の12着。その後4着、2着と着順を上げて10月新潟の未勝利戦で初勝利を挙げた。

「デビュー戦はすごく期待していたのでがっくり。でも新潟での勝ち方が良かった。一緒に稽古していた馬が結果が出ているのだから、普通に走ればチャンスが巡って来ると思っていました」

幼い頃、調教パートナーとして互いを高め合ったコスモブッドレアは2戦目で勝ち上がり、3歳になってG3京成杯3着、G2スプリングS4着と重賞で善戦。

コスモキュランダも同調するように本来の能力を発揮し始めた。7戦目となった弥生賞では3コーナーからまくり上げて押し切る強い競馬で覚醒した。

消耗を避けて、できるだけ少ないレース数でG1に挑む傾向が強い昨今、7戦重ねて大舞台に上がる権利を得た。たたき上げがエリートに挑む。鞍上には来日していきなり先週の桜花賞を制したモレイラ騎手を迎える。

生産も馬主もビッグレッドファームの皐月賞挑戦は、12年にゴールドシップの4着となったコスモオオゾラ以来。

「上位に肉薄できる位置にはいると思います」。

牧場スタッフの熱い声援も後押しする。【岡山俊明】