着実な上昇を遂げる馬がいる。牡馬クラシック1冠目、皐月賞(G1、芝2000メートル、14日=中山)の最終追い切りが10日、東西トレセンで行われた。大一番の調教を深掘りする「追い切りの番人」では、東京日刊の松田直樹記者が京成杯2着馬アーバンシック(牡3、武井)の調教過程に注目。2週前の先行追い、1週前&当週の3頭併せに心身の強化を見た。なお、皐月賞の枠順はきょう11日に確定する。

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アーバンシックの馬名の意味は「洗練された」。名前の通り、1歩ずつ着実に競走馬としてのステージが上がってきている。2週前追い切り後、武井師は「テンション上がるわー」と口角を上げた。この中間はこだわりの詰まった調整をこなしてきた。

「大きな2歳馬」。陣営はメンタル面の幼さをこう評す。操縦性の難しさ解消に取り組み、2週前には僚馬2頭に先行する追い切りを初めて取り入れた。普段のキャンターでは隊列の先頭を任せ、自立心を養ってきた中で冷静に走れるか。課題に馬も応えた。師も「あんなにうまくいくとは」と舌を巻くほどだった。

心の成長を感じ、肉体の負荷を強めた。1週前、当週の3頭併せは予定通り。2週続けて大外を回して伸びたことにも意図が透けている。前走の京成杯。直線で内へ体が倒れながら脚を伸ばす。崩れた態勢での2着は能力を示す一方、未完成ぶりを露呈する結果でもあった。「もともと能力はめちゃくちゃ高い。センスがいいけど、応用力はない」。だから教え込む必要があった。「もしかしたら普段の調教の形が影響したのかな、と。今回は外からかぶせる形で調教をしているのですが、馬もそれは納得してくれている。今日はすごくシャープに動いてくれて、すごく順調にきていると思います」。

1週前は6ハロン78秒9-11秒7、当週は5ハロン68秒8-11秒3。先週は直線入り口で一瞬、内へ行きかけたようにも見えたが、今週はスムーズな加速でゴールを迎えて最先着。5日の坂路調教にも横山武騎手がまたがるなど、意思疎通を深めた上での臨戦だ。武井師は「楽に勝ってほしいところですが、あまり強気なことを言うなと言われているので。この馬の能力をしっかり出してほしいと思います」と終始、ニコニコ顔。伸びしろを残す現状でも、やれることはやった。そんな手応えを感じさせる最終追い切りだった。【松田直樹】