落馬事故で10日に死去した藤岡康太騎手(享年35)について、兄の佑介騎手(38)が13日の阪神1R騎乗後に思いを語った。亡くなった後に取材に対応するのは初めて。目を潤ませながら気丈に胸の内を言葉にした。

「康太のことに関して、心配していただき、ありがとうございます。昨日、無事に家族で見送ることができ、少しずつですけど、僕も含め家族も気持ちの整理がついてきています。時間はかかると思いますけど、前を向いていけるかなと思っているところです」

1Rでは6番人気エールヴァーゲ(牝3、坂口)に騎乗して5着だった。

「気持ち的に落ち着かなかったら競馬に乗るのも失礼だなと思ったので、そのあたりも考えたんですけど、生前から康太とは、一緒に乗っている以上は、こういうこともありうるとよく話をしていたこともあり、家族よりも受け入れられるのは早かったかなと思います」

この日は1R前にウイナーズサークルで黙とうが行われ、武豊騎手らとともに、事故のあったダートコースの3コーナーを向いて黙とうした。中には涙する騎手の姿もあった。

「突然のことだったので、お別れできないまま逝ってしまったと心を痛めてくださっているジョッキーの方もたくさんいて、けさ(武豊)会長の方から『みんなに声をかけてあげてほしい』ということで、あいさつをさせてもらって、気持ちを伝えることはできました。なかなかすぐにとはいかないと思いますけど、1日でも早く、騎手会らしい明るい空気が戻り、安心して康太が見守れるようになればなと思っています」

3競馬場には半旗が掲揚され、献花台と記帳台が設置された。来週以降も開催中の競馬場において実施される。

「ファンの方もなかなかすぐにとはいかないかもしれないですけど、今までできていたこと、楽しめていたことが、そうじゃなくなってしまうのは康太の望むところではないと思うので、変わらず応援していただけたらなと思います」

1Rの本馬場入場前には場内放送で「謹んで哀悼の意を表するとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます」とアナウンスされた。レーシングプログラムにも同じ文言が記された。

15日には栗東トレセンでJRAと日本騎手クラブの合同葬が執り行われる。