早朝から驚きました。

調教取材に向けて、夜も明けないうちに布団を出てスマホを取ると、日本でおなじみのオリビエ・ペリエ騎手(51)が現役を引退するとのニュースが飛び込んできました。同騎手の活躍ぶりは言わずと知れたもの。個人的には競馬ゲームでも“多用”していたパイオニアの引き際に、時代の移ろいを感じました。

去る者あれば来る者あり-。まさにこの言葉がぴったりな出来事でした。支度を済まして記者寮から美浦トレセンへ向かうと、短期免許を初取得し同トレセンに初来場したタイグ・オシェア騎手(42)の姿がありました。この日は朝から雨が降り、上着が必要な肌寒さ。そんな中でも半袖姿で調教に騎乗し「(トレセンは)すべてが組織化されてスムーズですし、日本の街もすべてがきれいにできていて驚きと感動しています」と目を輝かせていました。

オシェア騎手は来日自体が初めて。ですが、記者が同騎手を生で見たのは初めてではありません。海外初出張となった3月末のドバイ取材でドバイゴールデンシャヒーン、ドバイワールドCの2勝を目にしました。

ローレルリバーで大差の逃げ切り勝ちを収めた後者が衝撃的でしたが「すごい」と思ったのは前者のレースぶり。2番ゲートのタズで好発を決めると、日本のドンフランキーに先手を譲りながらも、主張して内ラチ沿いは譲らず道中は2番手。直線も進路確保まで追い出しを待って、残り200メートルから一瞬の脚を引き出して抜け出しました。

アイルランド出身で拠点のUAEではリーディングを12度も獲得しています。「昨年の8、9月ごろから来日の準備を始めました。日本の馬が世界中で大活躍しているのを見て、日本の競馬に私も参加したいと意識するようになりました。日本馬は見た目が筋肉質で大きくて力強いという印象。どの馬に対してもベストだと思ってもらえるような騎乗を心掛けたいですし、日本の関係者の方々に戻ってきてほしいと思ってもらえるような結果を出したい。いつかジャパンCを勝ちたいです」と、報道陣に力強く意気込んでいました。

ペリエ騎手の活躍を皮切りに、多くの外国人騎手が短期騎手免許制度を活用して来日を果たしています。オシェア騎手も「フランシス・ベリー騎手、ライアン・ムーア騎手、オイシン・マーフィー騎手、トム・マーカンド騎手に『日本で乗れるかもしれない』と連絡したら『日本はすごくレベルが高い。そういう国で乗れることはすごく幸せだよ。2つ返事で行った方がいい』と言ってもらえたので、すごく楽しみです」と来日経験者からの“金言”を胸にしていました。

「日本で食べる日本食を楽しみにしています。昨日はラーメンを食べたので、今日はすしを食べたいですね」。終始すてきな笑顔で対応していただいたオシェア騎手の騎乗から目が離せません。【桑原幹久】