米3冠初戦、ケンタッキーダービー(G1、ダート2000メートル、現地4日=チャーチルダウンズ)に、日本調教馬2頭が挑戦する。日本陣営の思いに迫る連載「侍ホースマン in USA」第2回は、テーオーパスワード(牡3、高柳大)を送り出す高柳大輔調教師(46)。デール・ローマンズ調教師らチャーチルダウンズのトレーナーと交わした7年前の約束を果たすため、開催都市のルイビルへ。このレースに懸ける思いを聞いた。

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7年越しの思いを胸に-。開業7年目を迎えた高柳大師が、テーオーパスワードとともに、ケンタッキーダービー制覇に挑む。

高柳大師 ケンタッキーダービーは競馬の最高峰ですからね。行ってみたいという思いは強かったですし、パスワードが新馬戦を勝ってからは、ここを目標にローテーションを組みました。こんな機会はなかなかないと思いますし、まずは無事に出走させるためにしっかりと調整したいです。

7年前に交わした約束を果たしに行く。師が調教師試験に合格した17年の春。研修で米国のキーンランドとチャーチルダウンズを訪れた。1カ月間ほど滞在して帰国する際、チャーチルダウンズの調教師に言われた“ある言葉”がずっと心に残っている。

高柳大師 デール・ローマンズ調教師をはじめ、チャーチルのトレーナーに「また来いよ。待っているからな」と声をかけてもらい、「はい」と返事をしました。なので、それからは「いつかケンタッキーダービーに管理馬を出走させないと」と思ってました。その約束を7年越しにかなえることができて、良かったです。

高柳大厩舎を支えた名馬テーオーケインズの雪辱を果たす遠征でもある。国内でG1&JpnIを計3勝した同馬だが、遠征したサウジアラビア(22年サウジC8着)、ドバイ(23年ドバイワールドC4着)では勝利できず。候補にも挙がっていた米国遠征のプランも白紙になっていた。

高柳大師 アメリカで知り合った関係者の方々から「ケインズを連れてきてくれ」と連絡をもらっていましたし、ブリーダーズCに出たいと強く思っていました。その夢はかなわなかったのは残念ですが、代わりにパスワードで行くことができる。うれしいです。

多くの人の思いを乗せて、世界最高峰に挑む。4月26日に現地に到着。初めての航空機輸送をクリアした。「経験が浅いぶん、未知な部分は多いです。元々、動きが良くて期待していた馬。馬の動きと成長が合致し、結果につながれば」。日本馬の悲願へ。決戦はもう目前だ。【藤本真育】