今度こそ日本競馬界の悲願達成なるか-。欧州最高峰レース凱旋門賞(G1、芝2400メートル、5日=パリロンシャン)が今週末に迫った。日本馬の初挑戦から半世紀以上。幾多のスターホースが花の都に散った。連載「凱旋門賞回想録」では、過去に現地で6度の取材経験を持つ太田尚樹記者が思い出のレースを振り返る。
【第2回=14年6着ハープスター、8着ジャスタウェイ、14着ゴールドシップ】
ワクワクさせてくれるトリオだった。
世界ランク1位ジャスタウェイ&福永祐一騎手、ステイゴールド産駒の暴れん坊ゴールドシップ&横山典弘騎手、豪脚の桜花賞馬ハープスター&川田将雅騎手。
この人馬3騎なら、やってくれるんじゃないか。
3年連続3度目の凱旋門賞取材。前2年でオルフェーヴルが連対していただけに、期待に胸を膨らませて飛行機へ乗り込んだ。
“オールジャパン”の魅力も感じていた。3頭とも日本産馬で、鞍上も日本人。父もハーツクライ(ジャスタウェイ)、ステイゴールド、ディープインパクト(ハープスター)だ。もちろん、外国人騎手や外国産馬を否定するつもりなどないが、大和魂を刺激される顔ぶれだった。
一方で、遠征には逆風も吹いていた。この年からJRAの海外遠征への補助金(最大1000万円)が打ち切りとなったのだ。海外馬券発売開始(16年)の2年前。今では交付が再開されているが、国外へ打って出るには近年で最もハードルが高い時期だったといえる。2頭出しの須貝師は「両オーナーの理解がないとできないです」と感謝していた。
新たなトライも見られた。当時は本番の1~2カ月前に渡欧するのが定石だったが、3頭は15日前に出国。ドバイや香港においても定着しつつあった短期滞在で挑んだ。
いずれも欧州初陣だったが、フランスでの注目度は高かった。直近4年でナカヤマフェスタ(10年)を含めて2着3回の日本勢。当日は一時的とはいえハープスターが1番人気へ浮上した。川田騎手からは「レースを待つ間は人生で一番緊張しました」と聞いた。それを乗り越え、馬上では平常心を取り戻していたという。のちのリーディングジョッキーが、1つの殻を破った一戦でもあった。
それでも、勝てなかった。ハープスター6着、ジャスタウェイ8着、ゴールドシップ14着。もうすぐに思えた頂点が、あらためて遠く感じる結果を突きつけられた。
欧州勢特有の不気味さも思い知らされた。
前年にオルフェーヴルを5馬身差で退けたトレヴは、以降3連敗中だった。現地でも「終わった」と見なされ、6番人気に甘んじていた。だが、終わってみれば2馬身差の完勝…。日本と違い、たとえば調教タイムは公表どころか計測もされず、圧倒的に出走馬の情報が少ない。いわば、えたいの知れない敵と戦う難しさも感じた。
そんな敗戦を振り返る中で、ほっこりさせられたのがゴールドシップの存在だ。
数々の武勇伝を持つ癖馬。だが、今浪厩務員は「あの時だけはおとなしくて、仕事が一番やりやすかった。緑ばかりの景色で、牧場にいるような感じだったのか…」と振り返る。一方で、森のような調教場で愛馬に置き去りにされ、迷子になったというエピソードは今でも笑える。
思いつくがままに書いてしまった感はあるが、それだけ話題に富んだ年だった…ということでお許し願いたい。
結果だけを見れば大敗なのかもしれない。それでも、レース前の高揚感は、勝ち負けした年にも劣らなかった。個性派3頭の魅力にあふれた挑戦。存分に楽しませてもらった。

