JRA初の還暦ジョッキーがターフを去る。現役最年長60歳の柴田善臣騎手が引退を決断した。15日、JRAが発表した。本人から騎手免許の取り消し申請があり、18日付けで騎手免許を取り消す。16日に会見を行う予定で、今後はJRAのアドバイザーに就任する。競馬学校騎手課程の1期生として1985年にデビュー。通算2341勝、JRA重賞96勝(うちG1・9勝)を積み上げた。42年目の今年は3勝を挙げるも4月に右肩を負傷。懸命なリハビリを重ねたが復帰に至らず、目標とした還暦での騎乗はかなわなかった。
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忘れもしない。念願の中央競馬担当になって間もない24年の9月初め、先輩記者に連れられ、柴田善臣騎手のもとへ。早速名刺を渡すと「仕事はね、楽しいのが一番だよ」。社会に出る先輩として、心構えをアドバイスしていただいた。
1年半ほど前に“引退”はよぎっていた。24年の12月から左肩の負傷で長期休養。翌年2月に“大井の帝王”こと的場文男さんの引退が発表。電話取材では「正直、自分もそういう時期なのは認識してるからね」と慎重な口調で切り出した。「数年前から“それ”を考えなきゃいけないと思ってきた。地方と中央の最年長で共通点もあったし、発表を聞いてひとごとではないと」。“引退”の2文字は口に出さないようにしつつも、どこか覚悟を決めているようだった。
日常生活に支障をきたすケガでも、リハビリに励んで復帰を目指した。その反面「競馬は根を詰めて見ないようにしてるんだよね。見ると乗りたくなるし、リハビリにも影響が出そうだから」。口調はのんびりでも、心中は穏やかではなかった。何か伝えたいと衝動に駆られ、メモを書く手を止め、「頑張ってください。待っています」ととっさに言葉が出た。
9月にターフへ帰ってきた。「馬の上が一番楽しいね」。表情も明るかった。復帰後初勝利となったピースワンデュックでの逃げ切り、翌日は検量室前で顔を合わせた。「やっぱり勝つとうれしいよ」。競馬を心から楽しんでいた。
連載用の取材では、騎乗経験がなくとも、必ずVTRを確認していた。「ヨシトミさんは何でも話してくれるから」という先輩記者の言葉通り、競馬の出来事や世間話まで答えてくれた。取材の下準備も自然と身が入った。還暦まで騎手を続けられたのも楽しかったからで、晩年のケガは楽しさの代償。ケガを癒やして、ゆっくり休んでください。お疲れさまでした。“仕事は楽しく”。僕の原点です。【中央競馬担当=深田雄智】

