ここアメリカでは新型コロナウイルス感染拡大の影響で需要が伸びたものの一つが、アルコール飲料だと言われています。3月中旬に外出禁止命令が出されて以降、レストランやバーが閉鎖されたことや1日中家に閉じこもる生活やストレスで必然的に家庭でのアルコールの消費量が増えたと言われています。

そしてもう一つ、コロナ禍で需要が増えたものが、ペットを家族に迎えることでした。ステイホーム命令が出されて以降、全米の多くの動物保護施設でペットを引き取る人が急増し、ここロサンゼルス(LA)でも収容されている全ての動物が引き取られてケージが空になる施設が相次ぐ事態となりました。それからもうすぐ半年が経ちますが、アメリカでの犬の日「ナショナルドッグデー」(8月26日)に合わせて、LAで家族を必要とする犬たちがビールをデリバリーするというチャリティーイベントが開催されました。

ダウンタウンのグランドセントラルマーケット内にあるゴールデン・ロード・ブルワリーのパブはコロナ禍前は大勢の人で賑わっていました
ダウンタウンのグランドセントラルマーケット内にあるゴールデン・ロード・ブルワリーのパブはコロナ禍前は大勢の人で賑わっていました

日本では「ワン・ワン・ワン」の語呂合わせから11月1日が犬の日になっているようですが、アメリカでは8月26日は警察犬や救助犬など、私たちの安全を守るために働く犬たちに感謝をしたり、家族が必要な犬たちの譲渡を促進するための日とされています。そのため毎年、全米各地で保護犬の譲渡会やイベントが行われていますが、コロナ禍の今年は、LAで人気のブルワリー「ゴールデン・ロード・ブルワリー」が動物保護団体とタッグを組んだ、ソーシャルディスタンスを意識したイベントが話題となりました。このイベントはオンラインからビールのデリバリーを予約して50ドルの寄付金を支払うと、新しい家族を必要としている犬たちが自宅までビール12缶を届けてくれるというもの。首からビールをぶら下げた犬たちが、配達員として自宅にやってくる。そんな誰もが思わず笑顔になってしまうイベントを通じて、保護動物たちが注目されて多くの命が救われるなんて、暗い話題が多いコロナ禍においてほっこり温かくなるニュースです。

ナショナルドッグデーにちなんだ犬がビールをデリバリーしてくれるイベントは愛犬家に大好評 (写真は公式サイトより)
ナショナルドッグデーにちなんだ犬がビールをデリバリーしてくれるイベントは愛犬家に大好評 (写真は公式サイトより)

ゴールデン・ロードは、カリフォルニアのライフスタイルを全面に押し出したクラフトビールとして2011年に誕生。現在LA発のマイクロブルワリーとしては最大規模として知られています。マンゴーやパイナップルなどフルーツテイストのビールを始め、カリフォルニアらしい青空とヤシの木、海を眺めながら楽しめる軽いタッチのビールなど種類も豊富。「SoCal Coconut Wheat(南カリフォルニア ココナッツ・ウィート)」「Hazy LA IPA(ヘイジーLA IPA)」などカリフォルニアらしいネーミングや、「Dodgers Blonde Ale(ドジャーズ ブロンド・エール)」など地元の野球チームを応援しながら楽しみたくなるビールもあります。LAダウンタウンの北部グレンデールにある醸造所内のパブは、愛犬同伴もOKなので愛犬家にも人気があります。残念ながら現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響で犬同伴は認められていませんが、犬たちが自宅までビールをデリバリーしてくれるという犬好きにはたまらない企画は大好評だったようで、3日間の販売は全て完売だったといいます。

犬のイラストが描かれた「ヘイジー・パップIPA」と名づけられたビールを犬が運んできてくれるなんて愛犬家にはたまりません (写真は公式サイトより)
犬のイラストが描かれた「ヘイジー・パップIPA」と名づけられたビールを犬が運んできてくれるなんて愛犬家にはたまりません (写真は公式サイトより)

デリバリーには犬たちとのプレータイムも含まれており、実際に触れ合ってマッチングがうまくいけば里親として引き取ることもできるため、きっと新しい家族と出会えた犬たちもいたことでしょう。コロナ禍で新たにペットを飼う人が増える一方、失業などによる金銭的理由や精神的理由から飼育放棄されるペットも多くいます。また、世界各国で外出禁止命令中に飼ったペットがその後に飼育放棄されているというニュースもあるようですが、ナショナルドックデーは犬を飼うには最後まで命への責任を負う覚悟も必要だということも改めて認識させてくれる日なのかもしれません。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)