下呂温泉に着いたころにはもう日が沈んでいた。群馬・草津温泉、兵庫・有馬温泉と並び、岐阜・下呂温泉は「日本三名泉」の1つとされる。朝から富山、石川、福井と北陸路を走り回り、さすがに疲れ切っていた。たまにはと奮発し、貸切露天風呂で全身をだらけさせる。温泉旅館の畳の香りが眠りへといざなった。


ライトアップされる下呂の温泉街
ライトアップされる下呂の温泉街

 鳥の声が聞こえ、部屋に一筋の光が差し込んだ。寝ぼけたまま、カーテンも窓も開ける。飛騨の、朝の空気を吸い込む。うまい。畳の香りも混じって、休暇の素晴らしさをあらためて感じる。妻が「撮れば?」と勧めてきた。朝からカメラを手にするつもりはなかったが、眼下の川は透き通って美しく、確かに収めておきたい風景だった。


温泉旅館から眺めた飛騨川の景色
温泉旅館から眺めた飛騨川の景色

 都会の喧噪とは無縁の温泉地。静けさ、さわやかさが心地よい。朝食をとり、チェックアウトまではまだ少しだけ時間がある。散策してみることにした。旅館の部屋から見えた橋を渡る。飛騨川に挟まれた渓谷にたたずむ下呂温泉。山あいの草津や有馬とは、ちょっと違った風景だ。割と広い河川敷には足湯もあった。宿泊した旅館を対岸から眺める。近くに寄ると、水の透明度の高さをあらためて感じる。


下呂温泉を流れる飛騨川が美しい
下呂温泉を流れる飛騨川が美しい

 鉄橋が架かっていたから、列車の通過時間を調べ、しばし待ってみる。ベストの撮影スポットを探しながら、河川敷の石を飛び歩く。バランスを崩して川に落ちそうになる。これだけきれいな川なら汚れずに済むか、なんて思ったりしていたら、列車はいきなり通過していった。下呂に流れる時間はゆったりでも、電車はそうはいかず定刻だ。


JR高山本線が橋を渡っていく
JR高山本線が橋を渡っていく

 1000年以上前に、近隣の山・湯ヶ峰の山頂付近で温泉が湧出したのが全てのはじまり。やがて湧出がなくなり、鎌倉時代の1200年代、飛騨川の河原で突然また湧出したのだという。「白鷺伝説」と呼ばれる奇跡の湧出地移動によって、利便性が一気に高まり、下呂温泉の名が世に広まった。現在は河原には「噴泉地」といいう露天風呂が整備されている。アルカリ性単純温泉。活字にすればシンプルなのだが「絹のよう」と称される下呂の滑らかな湯質は、季節を問わず観光客を集める。


飛騨川の河原にある露天風呂「噴泉地」
飛騨川の河原にある露天風呂「噴泉地」

 下呂温泉の価値を高める飛騨川は、下呂から離れてもその美しさを保つ。益田街道と呼ばれる国道41号線に沿って、複雑な渓谷を流れながら、南へと進む。写真に収める余裕はなかったものの、むき出しの岩が力強く乱立する「飛水峡」は絶景の連続だった。伊勢湾へと注ぐ大河・木曽川との合流も近づく七宗(ひちそう)町で1枚撮った。NHK朝の連続テレビ小説「半分、青い。」の舞台・東濃にも近い、下呂から続く飛騨川流域。ここも十分、青かった。【金子真仁】


七宗町の道の駅から撮った飛騨川
七宗町の道の駅から撮った飛騨川

「下呂温泉」へ行くには?

 電車だと名古屋からJR高山本線の「ワイドビューひだ」でおよそ1時間半。下呂駅は温泉街の入口にあるので、各旅館へは徒歩でも移動可能です。車では東京・大阪方面からなら東海環状自動車道・美濃加茂ICから国道41号を北上するのがベスト。北陸方面からだと東海北陸自動車道から飛騨高山経由で進むのが最速のようです。


Wonderful View No.72 “The Gero Onsen”

The Gero Onsen is hot springs in the mountains of Gifu (center of Japan Islands). It is counted one of the Japan's three most famous hot springs. The quality of hot water is very smooth which is known as "totally silky". The river flowing through the resort is so beautiful.


[DATA]

Address: Mori, Gero-shi, Gifu-ken

Access: About 90minutes by express train from JR Nagoya station

Parking: Every hotel holds