有明海は、いくつもの絶景をつくる。今回の目的の場所に広がる海は、厳密にいえば有明海ではない。九州西部の入り組んだ海は「島原湾」と呼ばれ、その最も奥地が正式に「有明海」と呼ばれる定義付けのようだ。多くの干潟生物が住み、満潮と干潮とではガラッと景色が変わる。熊本・宇土市の「長部田海床路(ながべた・かいしょうろ)」もその1つだ。

満潮の長部田海床路へズームイン
満潮の長部田海床路へズームイン

写真を撮るのに10分かかった。海の向こうへ電柱が続く光景の前で、白いドレスの女性がずっと被写体になっていた。雲間から差すわずかな光が、海を輝かせる。長部田海床路は、この満潮の時間帯が人気だ。しかし、たまたま通りすがった人は謎が残る景色だろう。なぜ、海に何本も電柱があるのだろう。なぜ、この先は海なのにちょっとだけ道路があるのだろう。

沖へと電柱が伸びる長部田海床路
沖へと電柱が伸びる長部田海床路

謎は干潮時に大方解決する。同じ場所とは思えないほど、干潮時の長部田海床路はビジュアルが変わる。干潟に道がまっすぐ続き、沿うように電柱も並ぶ。干潮前後3時間が見頃、との案内板があった。その限られた時間しか現れない道なのだ。

干潮時の長部田海床路
干潮時の長部田海床路

沖には軽トラックがたくさん停まり、小舟も浮かぶ。陸寄りは水気が少ないから、獲物をしっかり押さえるために沖へ向かうのだろう。この軽トラック群はなかなかの壮観だ。日本一豪快な駐車場かもしれない。干潮の長部田海床路には、許可された漁業関係者以外、車で進入することはできない。時間が来たら一斉に沖へ進み、時間が来たら確実に戻る。いつか、干潟を進む軽トラックの車列を眺めてみたい。

沖の干潟内に駐車する軽トラックも多い
沖の干潟内に駐車する軽トラックも多い

長部田海床路から数キロ西側には、御輿来(おこしき)海岸があり、ここの展望台にも「干潟景勝の地」という看板が立つ。満潮時には何の変哲もない海ながら、潮が引くと、三日月のような干潟模様(砂紋)が水面に現れる。この三日月干潟に、日没が重なるときが本気の御輿来海岸。夕日に照らされる三日月干潟の美しさは、それはもう極上のものだという。年間を通じても条件合致は10日前後とのこと。奇跡の絶景といえる。

干潮近くなり縞模様が美しい御輿来海岸
干潮近くなり縞模様が美しい御輿来海岸

長部田海床路や御輿来海岸から有明海をはさんだ対岸方面、佐賀県太良町にも干潟の絶景がある。大魚神社にある海中鳥居だ。3基だけながら「沖之神」と書かれた鳥居が神々しい。有明海の沿岸は、満ち引きで景観が変わる場所ばかり。地域に住む人々にとってはこれが普通でも、干潟と縁がない日常を送る人々にとってはなかなかインパクトの強いエリアだ。【金子真仁】

佐賀県太良町の海中鳥居
佐賀県太良町の海中鳥居

「長部田海床路」へ行くには?

熊本市街地から約25キロ。熊本市内は慢性的に交通渋滞が多いですが、駅西側からのルートなら30分少々でも着ける場所です。海床路の陸側は公園になっているので、そこに駐車場が20台分ほどあります。カーナビの住所設定は「熊本県宇土市住吉町長部田」。電車ではJR三角線の住吉駅から徒歩20分ほど。


Wonderful View No.118 "The way which appears at ebb tide"

A way appearing at ebb tide is in Kumamoto. It is called "the sea way of Nagabeta". When it is ebb tide, several hundred meters of ways appear. When it is a high tide, the way disappears underwater, and only telephone poles are left. For a mysterious scene, many tourists come.


[DATA]

Address: Nagabeta, Sumiyoshi-cho, Uto-shi, Kumamoto-ken

Access: About 40 minutes by car from central Kumamoto

Parking: For about 20 cars