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【里崎智也】涌井秀章が見せた「ピッチングの奥義」 佐々木朗希にも日本で学んでほしかった
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- 中日対ヤクルト 1回表、登板する中日先発の涌井(撮影・森本幸一)
<中日2-0ヤクルト>◇14日◇バンテリンドーム
プロ21年目の涌井を見ながら、現役時代に対戦したダルビッシュやマー君を思い出していた。唯一のピンチと言える4回1死一、三塁。オスナを1-2から最高のスライダーで空を切らせ、続く赤羽も同じスライダーで遊ゴロに打ち取った。
1点差で同点やむなしの場面、涌井の腕の振り、フォームからみなぎらせる気迫も、すべてにおいて一気に力感が数倍増しになった。現役のころ、ダルビッシュと対戦する時は「走者がいない時がチャンスタイム。ピンチになるとスーパーダルビッシュになるぞ」と仲間内で話をしていた。それをほうふつとさせる涌井の見事なギアチェンジだった。
ちょうどこの日、球界にとっては残念なニュースが入ってきた。佐々木朗希の負傷者リスト入り。私は涌井の投げっぷりを見ながら、思わずにいられなかった。佐々木も日本にいる時に、こういう超一流投手から、馬力だけに頼らない投球術を学んでほしかったと。
全力で抑えるだけのスタイルだけではなく、通常運転では8割で封じるが場面に応じて切り替える技術もある。スタミナ管理、ケガ予防、選手寿命の観点から、それは非常に大切だ。長く勝ち続けている投手は違う。平場では8割で100を出力し、正念場では10割で100を出す。同じ100でも、球質が異なる。ここに、打者を圧倒するスーパー涌井の真骨頂があったということだ。
私も打席で味わった。ダルビッシュがモーションを起こした瞬間から、それまでとは異次元のキレと迫力を見せつけられる。おそらく4回のオスナ、赤羽もそれまでの140キロ後半とは一線を画した強烈な148キロだったのではなかったか。その直後、ストライクゾーンからボール球に制球されたスライダーに、なすすべはなかったのだろう。
今はメジャーを目指す時流だ。それは理解できるが、日本プロ野球にはヤクルト石川や涌井のように大人のピッチングで長く勝ち続ける強者がいる。いきなり若手がチャレンジできるピッチングではないが、その違いを知ろうとすることは、とても大切な視点だと思う。
ドジャース佐々木はもちろんのこと、若い投手たちも、素晴らしいお手本がいることを、ピッチングの奥義とも言うべきギアチェンジの高等技術を、よく見て研究し、その域へ肉薄してほしい。(日刊スポーツ評論家)
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- 中日対ヤクルト ヒーローインタビューを終えファンとタッチを交わす(右から)上林、涌井(撮影・森本幸一)
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- 中日対ヤクルト 涌井(左)はドアラから祝福を受ける(撮影・森本幸一)
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- 中日対ヤクルト ヒーローインタビューを終えファンとタッチを交わす涌井(撮影・森本幸一)
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- 中日対ヤクルト 涌井(左)はドアラから祝福を受ける(撮影・森本幸一)
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- 中日対ヤクルト 涌井(左)はドアラから祝福を受ける(撮影・森本幸一)
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- 中日対ヤクルト 1回表、登板する中日先発の涌井(撮影・森本幸一)
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- 中日対ヤクルト 6回表ヤクルト2死、汗を拭く涌井(撮影・森本幸一)