勝利を収めた阪神にとって、もっとも大きいと思ったのは、近本が久しぶりに1本のヒットを放ったことだ。2点ビハインドの7回2死一塁、巨人中川から左二塁打。これが自身8試合、39打席ぶりの快打になった。
昨シーズンまでコーチの立場で接してきたなかで、もっとも繊細な印象を強く受けたのが近本だった。試合前からプレーボールまでのルーティン、それ以前の準備も含めて、今まで近本のような選手に出会ったことはなかった。
ずっと当たりがなかった間も、個人的にずっとビデオでバッティングを見ていた。自分なりに感じていたのは、下半身に蓄積した疲労によって、トップからインパクトの瞬間までが緩んでいたのではないだろうか。
そもそも「出る」「走る」「かえす」という立ち回りは、リードオフマンというだけでは軽々しく、まさにチームの軸となる存在感の大きさ。あれだけきめ細かい打者でも、これだけ深みにはまってしまうわけで、改めて打撃術の難しさを痛感したものだ。
本人も長いトンネルを抜けてホッとしたに違いなかった。近本がつないでの2死二、三塁から、中野、森下、佐藤輝の連打で、あっさりとひっくり返した。1本が出たことで気持ちを切り替えてプレーができるのではないだろうか。
ポストシーズンで対戦する可能性がある巨人は走攻守にミスが目立ったし、しゃかりきに勝ちにきているようには伝わってこなかった。阪神が普段通りに戦いながら、カード勝ち越しを決めた3連戦になった。
(日刊スポーツ評論家)




