好投才木という素材を壊さないよう、細心の注意を払った阪神梅野か、いったいどこにボールが来るか皆目見当がつかない大荒れウイットリーで試合を壊さなかった巨人大城か。どちらの捕手も、よく役割を全うしたと、たたえたい気持ちになった。

才木は申し分なかった。序盤は真っすぐ中心の組み立てで始まり、中盤から終盤は変化球の比重を増す。そこには梅野の観察眼がある。打者が何を待っているのか、ちょっとしたしぐさ、反応から狙い球を読み、スライダー、フォークを駆使した。

制球良く、ほぼ構えたところに来る。この申し分ない素材を壊すことはできない。最少失点すら許されない独特の重圧の中、9回2死まできっちり巨人打線を観察し通したその集中力は見事だった。

対して大城の苦心には、感情移入するほどだった。ウイットリーはイニングごとに球種によって制球がバラついた。つまり、軸になるボールがない。かつイニングごとに波があった。

こうなると、もはや打者の反応、対戦データを度外視するしかない。ひたすらウイットリーに寄り添うリードで試合を壊さない。球威はある。そこを糸口に試合を作る。難しいミッションだ。

この正反対のコントラストが、首位攻防戦の初戦に来る。非常に興味深かった。お互い3連敗だけはしたくない。ゆえに初戦はきっちり取りたい。その中で、これだけ先発のクオリティーに差がある。引き込まれた試合だった。

2006年のWBCで上原(浩治)さんとバッテリーを組んだ時、構えたところに正確無比に投げてくる正確さに、私は捕手人生で初めて「これで打たれたら自分の責任だ」と、恐ろしさを感じてのリードだった。似た感情を梅野も抱いていたかもしれない。

9回2死三塁、カウント2-2。ダルベックへのフォークは落ちない。ど真ん中の失投は左中間スタンドで弾む逆転2ランとなった。99・9%、心を砕いたリードも、まさかの1球で報われない。

この日、どちらかの捕手は報われるにふさわしい仕事をした。梅野は9回裏に代打を送られて交代したが、本心を言えば、両者報われてほしかった。これが捕手の宿命だ。きっと、梅野も大城もクタクタだろう。報われないと思うかもしれないが、この出色の経験もまた、捕手の大切な引き出しになる。(日刊スポーツ評論家)

9回、2死二、三塁の好機で空振り三振に倒れた阪神・佐藤。捕手大城=甲子園
9回、2死二、三塁の好機で空振り三振に倒れた阪神・佐藤。捕手大城=甲子園