「甲斐キャノンには赤松選手しかいない!!」

会場に置かれた応援ボードには、そんなメッセージもあった。胃がんからの再起を目指している広島赤松真人外野手(36)が11日、広島市内でがんイベントのトークショーに参加。集まったファン約300人は、がんと闘いながらプレーする前例のない選手の声に熱心に聞き入っていた。

話題は広島が敗れた日本シリーズにも。ソフトバンクでMVPに輝いた強肩捕手・甲斐の存在が、赤松の1軍復帰への意欲を刺激したようだ。「自分ならここで走るとか思いながら見ていた。全部刺していたけど、1回でも成功したらすごいダメージだったと思う」。足のスペシャリストとして、テレビ観戦しながらイメージを描いていた。

数字上は不可能な二盗だからこそ、走りがいがある。「あれが盗むという意味で本当の盗塁。前の話だが(元阪神)赤星さんも言われていた。盗塁は3・2秒の戦い。甲斐君レベルで(捕球から)1・8秒で二塁に投げられると、(投手の)クイックが1・2秒なら(塁間を)3・2秒で走ってもアウトになる。配球や投手のクセを盗む必要があるとあらためて痛感した」。

今季は2軍で実戦復帰。55試合で盗塁も5つ決めた。成功率は100%。「よーいドンで走ったら速い。でも反応が鈍い。50%くらい」。そんなスタートの反応速度は他の動作と同様に、夏以降に良化した手ごたえがある。1軍戦力になるという目標は来季に持ち越しとなった。今日12日に2軍キャンプに合流する。

がん告知時に5年生存率50%と言われた。胃の約半分を切除。抗がん剤の副作用で皮膚が敏感になり、ドアノブに触れてやけどしたこともある。9月のリーグ優勝日は突き動かされるようにマツダスタジアムを訪れ、同僚の歓喜を見つめた。「今年を来年にどう生かすか。2軍で結果を出さないと1軍に上がれない。筋力、体幹をアップして機動力に変えていきたい」。挑戦は続く。【大池和幸】