1月18日朝、前日からの天気予報通りにロッテ浦和球場にも雪が舞った。気温3度。「雪だし寒いし誰もいないだろうな~と思って来たら、ファンの方が多くて」と、ロッテ森遼大朗投手(20)は驚いた。

都城商(宮崎)から入団して3年目を迎える。1年に1回は、浦和にもこんな雪の日があるという。広々としたグラウンドには誰もいないのに、外野フェンス沿いを淡々と走る。「誰もいなくて、逆に集中できるので」。大切な1人の時間を目ざとく見つけ、カメラで撮ってしまったことが少し申し訳なくなる。

左ひざの故障が完治せぬまま、育成契約でプロ野球選手になった。素質豊かな右腕には、九州の大学から誘いもあったが「練習環境はすごくいいし、トレーナーさんたちもいるし、野球に集中できるかなと思いました」。不安がなかったわけではない。

2年が過ぎた。1年目はリハビリに集中し、昨年ようやく試合で投げた。「内容はすごく濃かったけれど、自分が思った通りにはいかない2年間だったと思います」。高校野球とは違う。際どいコースはしっかり見逃される。「細かいところをしっかりやらないと、プロでは通用しないと本当に思います」。

育成選手として3年目。誰に言われるまでもなく、感じるものは多い。「後がない…ですよね。この1年は死ぬ気でやるだけです」。柔らかな笑顔や声色に、確かな真剣味が混ざった。

豊かな素質を、そろそろ示さねばならない段階に来ている。2月の石垣島キャンプ。ドラフト1位ルーキー・佐々木朗希投手(18=大船渡)に最大の注目が集まるのは間違いない。「少しでも誰かの目に留まるように」と森は言う。

どうやれば、誰かの目に留まるか。そう尋ねると、少し考えて「地道にやっていくしかないと思います。地道に」と落ち着いた口調で決意を示した。先発で防御率3点台、そして支配下登録へ-。まず目指すべきものは見えている。雪が降ろうが風が吹こうが、歩みは止めない。【ロッテ担当 金子真仁】