プロ野球番記者コラム

“木鶏感”出てきた広島大瀬良、今季に懸ける覚悟

<ニッカンスポーツ・コム/プロ野球番記者コラム>

威風堂々。ちょっと“木鶏感”を感じたから、聞いてみたくなった。

広島情報 ブルペンで投球する大瀬良(撮影・栗木一考)
広島情報 ブルペンで投球する大瀬良(撮影・栗木一考)

2月下旬。広島の沖縄キャンプ地、コザしんきんスタジアムでのひとコマだ。

まだ日差しがマックスに達していない静かな午前中、球場では投内連係が行われていた。順番を待つ投手陣が一塁線の外側で列を成す。その中心、大瀬良大地は腕を組んで仁王立ちし、何度も野手に声をかけていた。

「(佐々岡)監督も『一体感』という言葉をよく使われているので。ああいう時は、あえて野手に積極的に声をかけるようにしているんです」

背番号14は少し照れくさそうに、声掛けの意図を説明してくれた。

28歳。18年には15勝で最多勝に輝き、チームをセ・リーグ3連覇に導いている。3年連続2ケタ勝利をあげ、昨季はリーグ最多の6完投。さすがにもう「エース」という表現を使っても問題ないかと尋ねると、大瀬良は「いや、まだまだ…」と今度は苦笑いした。

「確かにそう言ってもらえることは増えましたけど、まだ『エース』という言葉を全面的に受け入れることはできていないですね。そこに近い位置まで来ているというのは分かっていますけど…」

気取らず優しく誠実。誰の目にも好青年に映る大瀬良はプロ入りしてから数年間、敵チームのファンからも「頑張れよ!」と声援を送られる存在だった。

それが大黒柱に成長した18年には、ようやく敵地でヤジを飛ばされるようになった。そして昨季、KOされるとカープファンからも罵声を浴びるまでになったという。

「1週間、何しとったんじゃ!」

「こっちは金払っとんじゃ!」

もちろん気分のいいモノではない。ただ、辛辣(しんらつ)な言葉1つ1つは、大瀬良が「好投して当たり前」という立場まで上ってきた証でもある。

それでも本人はまだ、自身をエースとして認めるつもりはないらしい。

「今年やってどうか、じゃないですかね」

そのひと言に、今季に懸ける覚悟が見え隠れする。

「木鶏」。九州共立大時代に当時の仲里清監督から教わって以来、大切にしてきた言葉だ。闘鶏の最強の状態を表す言葉で、木彫りの鶏のように何事にも動じない様子を意味する。

少しずつ木鶏の域に近づいてきているかも、なんて冗談交じりに聞いてみると「いやいや、余裕があるように見せているだけですって」と笑顔で返された。その表情にもまた余裕があって、妙に頼もしく感じる。

昨季、カープは4連覇を逃した。常勝軍団であり続けるには、今季は重要な1年になる。20年。勝ち星を積み上げてチームをV奪回に導いた時、エースと呼んでもいいか、もう1度聞いてみようと思う。【遊軍=佐井陽介】

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