もしも、配達先の扉の向こうに、プロ野球の大物新人が立っていたら…。そんな想像を膨らませたのは、阪神佐藤輝明内野手(22)が、遠征先のホテルでの過ごし方を教えてくれたからだ。

「ウーバーイーツを頼んで過ごしていました。外に行けないので」

17~19日までのウエスタン・リーグ中日3連戦(ナゴヤ)のため、3日間の名古屋遠征。選手は不要な外出はせず、ホテルで過ごすことがほとんどだ。とりわけ今回は、3試合のうち2試合が台風14号の影響もあり雨天中止。貴重な実戦が雨に流れ、自由な時間が「できてしまった」と察する。

そこで数少ない楽しみが食事ということ。佐藤輝は名古屋のご当地グルメ…ではなく好物のすしを注文し、ホテルの自室で1人でほお張ったという。少し笑顔になって語る姿に、22歳の素顔が垣間見えた気がした。 そんなグラウンド以外の時間が長くなってしまった名古屋遠征でも、復調へ向けて懸命にバットを振る姿は変わらなかった。ゲームが雨天中止となった18日は、フリー打撃で104スイング。時折「あ~!」とミスショットに声を張り上げ、感情を出しながら、納得するまで打ち込んでいた。

打撃だけではない。清水雅治野手総合コーチ(57)、中村豊外野守備走塁コーチ(48)から外野守備のアドバイスをもらうと、熱心に耳を傾ける姿が印象的だった。

「やっぱりファームは上と違って練習時間も長いですし、いろんな練習への意識がファームを経験したことで、いい経験になったので、上に戻った時も生かしていきたいと思います」

10日に出場選手登録を抹消された際は「これをまた成長するチャンスだと思って」と前を向いた。今、確実に成長し、この経験を力に変えている最中。しびれるような優勝戦線に復帰する時、成長した佐藤輝がグラウンドに、テレビ画面の向こうに立っているはずだ。【阪神担当=中野椋】