試合で投げられること。その感謝を強く持っているだろう虎戦士がいる。阪神育成の伊藤稜投手(25)だ。3年目での初登板から約1年。今季は2軍戦で15試合に登板して、13試合で先発。計68回を投げ、防御率は3・44となっている。

「3年間投げられていなかったので。イニングをしっかり投げられているのは、いいかなと」

21年育成ドラフト1位で入団。4年目左腕が、初めてタテジマのユニホームで実戦のマウンドに上がったのは、約1年前だった。

入団してから伊藤稜を苦しめ続けたのは左肩痛。1年目の22年シーズン中は手術をせずトレーナーからのケア等を受けて過ごした。

それでもなかなか状態は良くならない。同年12月に手術を受けた。その後、待っていたのは、長いリハビリ期間。試合で投球ができるようになるまで、1年半以上の時間を要した。

苦しさやつらさがあって当然の期間。もちろんそういう思いも抱えたこともあると思うが、当時を振り返る彼の口から後ろ向きな言葉が出ることはなかった。

「とにかく投げられた時に、ケガ前より良くなっているように、トレーニングもすごくやりました。投げている姿を想像して、こうなってくれたらいいなというのでやっていました」

前向きに取り組んだ男の口から出たのはトレーナー、ともにリハビリに励んだ選手たちへの感謝だった。

「投げられていなかった時にも、トレーナーさんが練習前と練習後に見てくださったり、本当にすごくお世話になりました。(高橋)遥人さんとか、小川さんとか、一緒にリハビリ組でやっていた人たちとトレーニングなどをして、頑張れた部分もあった。すごく感謝して取り組んでいます」

前を向いて、ついに初実戦にたどり着いた。昨年7月7日の日本生命とのプロアマ交流戦。想像していた試合で投げる姿を、実現できたのは七夕だった。

今季は2軍の先発ローテーションの一員として投げ続けている左腕。「真っすぐの強さは、全然去年とかよりいい」。7試合で防御率20・25だった昨季からの良化にも、手応えはある。

今年2月の春季キャンプは、紅白戦で1回を1安打無失点1奪三振。テレビ中継の球速表示では最速154キロをマーク。藤川球児監督(44)も評価していた。

「まだ(支配下昇格の期限となる)7月31日まで半月ある。チャンスがある以上は7月31日まで支配下目指してやっていくのと、もし7月、期限でダメだったとしても、しっかり自分の中の課題をしっかりクリアできるように取り組んでいくだけ」

感謝、向上心、さまざまな強い気持ちを持って、腕を振り続ける。【塚本光】