<ソフトバンク7-6日本ハム>◇24日◇みずほペイペイドーム
ソフトバンク王貞治球団会長(86)がホークス監督時代に付けた背番号89を背負って勝った。世界の王が福岡にやってきて32年。野球人として、1人の社会人として王さんの偉大なレガシーを受け継ぐプロジェクトの記念試合。逆転で白星で飾り王会長も「今日はどうなるかと思ったが、あの4点を取り返すぐらいだから大したもんだな」と笑顔だった。
福岡に限らず王さんの薫陶を受けた人間は多い。対戦した日本ハムの吉村浩常務取締役チーム統括本部長は88年、巨人王監督の担当記者だった。思い出を振り返って吉村氏は言った。「サインを世界の有名人の中で一番、書いた人ではないでしょうか。ギネス級だと思います」。確かに。世界中のいろんな有名人を思い浮かべてみたが、王さんほどペンを走らせた人はいないのではないだろうか。現役時代はもちろんのこと、巨人、ホークスでの監督時代、いや、今もまだまだ書き続けている。巨人監督を退任する最終戦では王監督自ら担当記者たちに「一緒に記念写真を撮ろうよ」と言って笑顔でシャッターに収まったという。
王さんが初めてサインを求められたのは早実の高校時代。甲子園のV腕は当然人気者だった。「(甲子園の)全国大会に出ちゃったからね。サインはそれからし始めたね」。かれこれ70年の間、想像を超える枚数にペンを走らせたことだろう。キャンプ地でのサイン会は恒例だったし、移動の際も気軽にファンのリクエストに応えていた。「気力」や「努力」の文字を大きく書き、自らの名前は添えるように色紙の左下に書くのが王さん流。「僕はね、しっかりと字を見ながら書かないと書けないんだ。王貞治と3文字あるからね。よそ見をしながらとかできないからね」。サラサラと流すような書き方は絶対にしない。きちょうめんな王さんらしい。「ファンの人たちにサインをするのはね、僕は野球への恩返しと思っているから。ファンへの恩返しでもあるしね。だから年俸の高い選手たちにはそう思ってしっかり、やってもらいたいよね。まあ、僕のサインは書きすぎたからあまり価値はないけどね」。野球に対する取り組みは当然ながら、王さんのレガシーはもっと懐が深い。そんな精神性こそ背番号「89」を背負ったホークスナインにはしっかりと受け継いでもらいたい。




