スタジアムが職場の記者が、球場を楽しむ極意を伝授します。日刊スポーツ野球部きってのグルマン、島根純記者(32)が楽天生命パーク周辺の食を掘る!

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杜(もり)の都・仙台。6月でも風はひんやりと冷たくて、心地よい。仙台駅東口に約4年住んでいた。人も街も食も全てがすばらしい。東口から楽天生命パークまでは、徒歩で20分程度か。一本道をテクテクと歩く。駅を背に歩くと、右手に見えてくるのは派手な看板の「つけ麺おんのじ」。個人的に「ドゥルドゥル系」と呼ぶジャンルで中毒性があり、ナイター後に何度も足を運んだ。

口直しに外せない甘味屋へ向かおう。宮城野通りのどん突き、ちょい手前で左に入ろう。住宅街の中に「武田餅店」がたたずむ。「おもち」と書かれたのれんをくぐると、ガラスケースに並ぶ菓子が出迎えてくれる。選んだのは「すあま」と、くるみ雁月(がんづき)。1つ108円(税込み)。安すぎて心配になる価格設定だ。歩きながら、すあまを口に運ぶ。モチッとした食感に優しい甘さ。好きだ。雁月もほおばる。モチッ。しっとり。赤ちゃんのほっぺたか。心の中の突っ込みがさえる。

球場で練習を見終え、試合前のメシに悩む。せっかくの機会、日刊スポーツ歴代担当が愛した名店を紹介したい。球場から道路1本挟んだ「桃山食堂」。いや、少し歩こう。今日はそばだ。「つきみや」も捨てがたいが、今日はガッツリいきたい。「あおば」だ。駐車場を抜けて、新寺通りまで出る。青葉城はもうないが、宮城野に現れたのは城。ドンと構えた時代村のような外観はインパクト大。

店内は広間に並べられたテーブルと小上がりの座敷。THE昭和感。メニューを手にしばし悩む。高遠そば(辛味大根)か天ざるか…。決めた。天ざる大盛り(1100円)だ。去年から代替わりし、大盛りの値段が安くなった。うれしい。運ばれてきたそばに思わずほおが緩む。これだよ、これ。石垣のようにみっちりと積み上がった盛りの良さ。天ぷらもアツアツ。さぁ、食べよう。

濃いめの麺つゆにわさびを溶かして、一心不乱にすする。ズッ、ズッ、ズズズッ。エビ天をチョンっとつゆに浸して、サクッ。ズッ、ズッ、ズズズッ。ズッ、ズッ、ズズズッ。嗚呼、たまらない。そば湯をもらい、箸を置く。口に福と書いて、口福(こうふく)。幸せとはうまいメシ、食べたいものを心おきなく食べることなのだ。

店を出ると冷たい風が気持ちいい。さぁ、ナイターだ。【島根純】