アジアにも新星が生まれている。侍ジャパン稲葉監督は台湾、韓国視察で目の当たりにした。

台湾ラミゴの林立内野手(23)に鮮烈な打撃を見せられた。8月15日の富邦戦。内角球に対し、巧みに左肘を体の外側に抜き、鋭い腰の回転とともに左中間にグランドスラムを運んだ。「もともと、内角は得意ではなかった。坂本(勇)選手のビデオを見て、内角打ちを参考にしました」。あどけなさが残る童顔は、日本が誇るスターの天性の技術にほれ込み、レベルを上げた。

トップでの代表歴はない。打率3割9分2厘と現日本ハム王柏融以来となる2人目の4割も夢ではなく、有力な代表候補となる。稲葉監督も「追い込まれてからの対応もできていたし、警戒する打者だと思う」と記憶に残した。

韓国には親子2代で日本の難敵になりえる打者がいる。元中日、李鍾範の息子、キウム李政厚外野手(21)は入団以来2年連続で打率3割以上を残し、今季も3割3分8厘でリーグ5位につける。「韓国のイチロー」と称された父は06年WBC代表でベストナインに輝き、日本戦全3戦で10打数3安打。父と違い、左打者でバットコントロールも巧みで、よりイチローのスタイルに近い。背番号51で軽くジョグする後ろ姿は、さらに重なる部分がある。

稲葉監督は98~01年まで同じセ・リーグで李鍾範としのぎを削った。「お父さんはヘッドスライディングをよく見せて、ガッツある選手だった。息子はスイングがコンパクトでバットコントロールがいい。追い込まれてからも低めの球をうまくさばいていた」と時代を前後して比べた。

アジア探訪で、すべてを掘り起こしてはいない。昨季王者で現在首位を走るSKの守護神、河載勲はリーグトップの34セーブをマークする。16年にヤクルトに在籍。ジェフンの登録名でプレーした外野手だった。17試合で打率2割2分5厘の数字が無機質に残っている。だが17年に独立リーグ徳島に復帰すると、投手との二刀流が本格化し、韓国リーグ入りした今季は投手に専念。150キロ前後の直球にスライダー、カーブ、フォークボールも操り、1年目での最多セーブを更新中だ。

韓国視察中はSK戦が雨天中止となり、生で見ることはかなわなかった。「中止になったこともあり、もう少し投手が見たかった。競った試合での中継ぎ、抑えも含めてですね。ただ映像は入手できるし、データもそろえられる」。持ち越された宿題は、継続して消化していく。(記録は17日現在、この項おわり)【広重竜太郎】