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日本ハム武田投手コーチ 遊び心が生む独自の発想

<新任指導者に聞く1>

気になる新任の指導者に聞く。第1回はパワー全盛の平成中~後期パ・リーグで、技巧派左腕として存在感を示した日本ハム武田勝1軍投手コーチ(41)。

4日、沖縄・国頭秋季キャンプで話し込む日本ハム栗山監督(右)と武田投手コーチ
4日、沖縄・国頭秋季キャンプで話し込む日本ハム栗山監督(右)と武田投手コーチ

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武田投手コーチの周りには笑顔が絶えない。10月23日、2軍本拠地の千葉・鎌ケ谷での就任会見。「緊張して3時間前に入った」。会見は正午開始だったが、9時に球場入りしていた。ある記者から質問された。

「3時間前には“もどして”しまったと…緊張のあまりですか?」

「ああ、3時間前に来ちゃったってことね。もどした…それいいね。吐いちゃった、でもいい。盛りましょう。吐きました!」

「入った」と「吐いた」の聞き間違いを救い、大爆笑に変えた。

現役時代もお立ち台ではファンの笑いを誘い、引退試合ではオカリナを演奏するなどユーモアにあふれた。「遊び心は大事。正直、真面目にやっただけでは結果を残せない世界。余裕があって、初めて打者と対戦できる」。絶対的な制球力を武器に、06年から11年間で通算82勝を挙げた。

直球は140キロに満たないが、すべての球種を同じフォームで投げて幻惑。スピードがなくても勝てることを証明した。剛腕全盛の時代に輝きを放った裏には、柔らかな思考がベースにあった。

沖縄・国頭での秋季キャンプでは、独自性あふれる練習メニューを実行した。けん制練習で、あえてボークを犯しなさいと指示を与えた。「たまには、こういう発想もいいでしょ?」。最初は選手も戸惑いながら、次々とボークを犯した。失敗パターンを知ることで、ミス撲滅を狙う逆転の発想だ。ボークも種類が多い。かぶらないように繰り返していく中で、選手に笑顔も広がった。

引退後は球団に在籍しながら、BCリーグ石川に派遣された。17年はフロント業とコーチ業を兼務。18年から今季までは監督を務めた。指導者としての信念を築き上げた3年間。

「結果に対しては、フォアボールを出しても怒らない。エラーしても怒らない。それは次のプレーが大事だから。自分に言い聞かせていました。結果論だけで言う指導者は、まだいると思うんです。そういう時代を変えていけたら。僕が少しでも『昔の指導者とは違うな』と言われるような環境づくりをしてあげたいなと思う」

言葉に重みはあるが、軽妙な語り口だから胸にすっと入ってくる。引退時に「遅くても勝てるという存在を示せた11年間」と振り返った新コーチは、独自のアプローチで選手の可能性を切り開く存在になるはずだ。【木下大輔】

◆武田勝(たけだ・まさる)1978年(昭53)7月10日、愛知県生まれ。関東第一高、立正大、シダックスを経て、05年大学・社会人ドラフト4巡目で日本ハム入団。13年に開幕投手を務めるなど、通算244試合で82勝61敗、防御率3・02。16年に現役引退。18、19年にBCリーグ・石川の監督を務め、来季から日本ハム投手コーチ。現役時は176センチ、73キロ。左投げ左打ち。

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