阪神は打てない、守れないという傾向がはっきりと出ています。その一方で勝てる要素もあるところが、ファンの皆さんがもやもやするところではないでしょうか。

阪神矢野監督(2020年8月18日撮影)
阪神矢野監督(2020年8月18日撮影)

盗塁48はリーグ1位、犠打55はリーグ2位です。一方、安打数は571本でリーグ最下位です。ヒットが量産できないながら、何とか機動力、犠打で先の塁に進めて1点を取ろうという意図は読み取れます。しかし適時打が出ない、連打が出ないという現象に苦戦しています。

以前から指摘されている打力が安定的に機能していないことが、勝ち星につながらない1つの要因です。さらに、もう1つの要因が阪神を悩ませています。それはミスです。防御率は巨人に次いで2位の3・52をマークしていながら、失策、バッテリー間のミスが防御率の健闘部分をそいでしまっています。

具体的に見ると、失点290に対し自責点は246。失点の15%が失策や捕逸絡みという比率の高さがあります。各球団の自責点にならなかった失点の割合を出すと、巨人3%、DeNA7%、広島とヤクルトが9%、中日が10%。数字を比べると、阪神はいかに失策が足を引っ張っているかが一目瞭然です。

さらに、リーグワーストの暴投33が追い打ちをかけています。暴投は記録上はエラーではありませんが、これはバッテリー間のミスと言えます。言うまでもなく失策は53、守備率は9割8分1厘でリーグワーストです。巨人の失策16、守備率9割9分4厘と比較すると雲泥の差です。

阪神は失策と暴投で、無駄に出塁、進塁を許しているということになります。これでは、防御率で巨人に次ぐ数字をマークしながら、勝ち星で巨人に大きく水をあけられているのもうなずけます。もっと勝っていてもおかしくない試合を、こうした要因で落としているということです。

阪神の課題は守りと、打線。ここ数年ずっと同じことをいわれてきました。毎年同じ課題を克服できずにいます。投手力で何とか踏ん張るものの、それが勝ちにつながらないジレンマに直結しています。大山、サンズの1発攻勢で勝つか、投手陣が抑えて逃げ切るしか勝ちパターンがない。これでは長いシーズンの中で、負担が投手陣に偏り、成績も安定しません。

まだ貯金があって、2位のチームに言うには早すぎる気もしますが、優勝を目指すなら守りに特化した練習を重ねるところから取り組まないと、同じことの繰り返しから脱却できません。(つづく)※データは9月14日現在。

里崎智也氏
里崎智也氏

◆YouTuber里崎氏の「里崎チャンネル」(登録数約36万人=12日現在)はニュースにも即座に反応するのが特長。藤川球児の引退表明ではすぐに「藤川球児に思うこと」として熱くコメントしている。