侍ジャパンと、いざ真剣勝負! 28年ロサンゼルス五輪出場を目指すアフリカ・ナイジェリアの代表監督に、慶大野球部出身の友成晋也氏(62)が就任した。友成氏は国際協力機構(JICA)職員時代にガーナやタンザニアなどで野球指導を行い、現在は一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構(J-ABS)の代表理事として、競技の普及に取り組んでいる。大きな可能性を秘める大陸での挑戦を、3回にわたり紹介します。

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6月下旬の東京駅。指定されたイタリアンレストランに行くと、友成さんはパスタを口に運びながら、パソコンのキーボードをたたいていた。

「ゆっくり食べている時間がなくて。申し訳ありません」。6月8日の就任発表から2週間。やらなくてはいけないことが山積みで、超多忙なのだが、それもどこか楽しそうだ。

「五輪出場はもちろんですが、侍ジャパンのように、アフリカで最も強くて尊敬されるチームをつくりたいんです。それがアフリカの未来につながると信じています」

ロス五輪につながるアフリカ予選は27年夏に予定されている。ベンチ入り人数は24人。友成さんはまず、ナイジェリア国籍を持つ「海外組」のスカウトに手をつけた。

「資格のある選手が日本国内に11人ほどいます。アメリカやカナダ、欧州にもいます」

日本ハムで活躍する水谷は、父親がナイジェリア出身の英国育ちで、昨年のWBCでは一時英国代表入りの可能性もあった。今回水谷は対象には入っていないが、資格のある選手の中には153キロを投げる大学生もいるという。「所属しているチームやリーグ戦との兼ね合いもあるし、簡単ではないですね」。可能性のある選手と所属チームを説得するため、友成さんは全国を走り回っている。

そもそも、ナイジェリアの野球事情はどうなっているのだろうか。

「28年前、私がJICAの職員として最初にアフリカに赴任したころは南アフリカ共和国に次ぐ強豪国でした。しかし、野球が五輪種目から外れてから年々下火になり、今ではアフリカでは5番手か6番手くらいではないでしょうか」

南アフリカはアメリカ3Aでプレーする選手もいてレベルはナンバーワン。また、大谷翔平のいるドジャースが野球アカデミーをつくったウガンダは、近年メキメキ力をつけてきた。2強をジンバブエ、ガーナ、ケニア、タンザニア、そしてナイジェリアといった国々が追いかけるといった構図だ。

ロス五輪の出場枠は全体で「6」しかない。ナイジェリアが出場するにはアフリカでトップになり、さらに他の大陸との決定戦を勝ち上がる必要がある。「ロスは本当にはるか遠くにある」と友成さんは苦笑いするが、勝算がないわけではない。

実はいまナイジェリアでは、野球が「ブーム」になっているという。2020東京大会(21年開催)から五輪種目として復活。同時に同国野球・ソフトボール連盟会長で、有力経済人のウチェ・オドゾール会長が、国内の大学で野球を推奨したこともあり、じわじわ広がっていった。驚いたのは、若い人たちの間で野球は「クール(格好良い)」と思われていることだ。

「野球のユニホームはとてもファッショナブルで、あれを着たいという若い人が増えているんです。カラフルなグラブやヘルメットなども目新しく、かっこよく映るのでしょう。資源国のナイジェリアは経済成長を続けていて、野球の装備にお金を使える中間層が増えてきているのも、背景にあります」

9月にはナイジェリアに赴き、国内リーグを視察する。代表選手候補をリストアップするとともに、種々の機器を持ち込み、強化も図る。

「選手一人一人の体力測定や技術認定を行い、専門のアナリストも同行してもらって分析します。候補に挙がった選手には具体的なトレーニング方法の提示、食べ物の栄養指導も行う予定です」

11月にはトッププロスペクトの投手数人を日本に呼び、NPBのコーチに見てもらう計画もある。同月にナイジェリアで最初のミニキャンプを行い、来年の年明けからは毎月、現地で強化練習を行う予定だ。

「南アフリカとウガンダの2強以外は日本の高校生、それも夏の地方大会1、2回戦レベルです。投打に3人ずつ、いい選手がいれば十分に戦えます。アフリカ予選は、総当たりの1次リーグを経て決勝トーナメントになることが濃厚なので、いい投手は3人は欲しい」

もう1つ、友成さんが期待するのは「ホームアドバンテージ」だ。ナイジェリアの首都アブジャには、野球専用の「立派な」(友成さん)球場があり、来夏のアフリカ予選の開催地に選ばれる可能性がある。オドゾール会長がアフリカ連盟の会長を兼務していることも「追い風」だ。

「これまでは環境が整っている南アフリカでの開催がほとんどでした。でも南半球なので、7月は結構寒いんです。もし、アブジャで行われるのならば、日本の高校野球のようにブラスバンド応援団を組織することも考えています」

赤道近くのナイジェリアで、智弁和歌山応援団の魔曲「ジョックロック」が流れるところを想像するとワクワクする。

友成さんがアフリカで野球の指導を行うのは4カ国目。日本から遠く離れた大陸に30年近くかかわっている。ただ、その道程は決して平らではない。最初に代表監督を務めたガーナでは「退任騒動」が起きた。【沢田啓太郎】(つづく)

◆友成晋也(ともなり・しんや)1964年7月16日生まれ、東京都出身。慶応から慶大に進み、硬式野球部に所属。内野手。リクルートコスモス(現コスモスイニシア)、JICAを経て、一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構代表理事。ガーナ、タンザニア代表監督、南スーダンで青少年野球団監督を歴任。アフリカ訪問国は駐在も含めて19カ国にのぼる。

◆ナイジェリア アフリカ西部のギニア湾に面し、国土面積は約92万3700平方キロメートルで日本の約2・5倍。人口2億3268万人(24年世銀調査)はアフリカ1位。主要産業は農業、原油、天然ガスでGDP規模はアフリカ4位(24年)だ。スポーツはサッカーが盛んで、代表チーム「スーパーイーグルス」は特に人気がある。首都アブジャ。ボラ・ティヌブ大統領。

◆28年ロス五輪野球 出場枠は6。開催国のアメリカ、今春WBC上位のベネズエラ、ドミニカ共和国はすでに出場権を獲得。残り3枠のうち2枠は、27年秋の「WBSCプレミア12」においてアジア最上位とヨーロッパまたはオセアニアの最上位チームに与えられる。最後の1枠は28年3月までに開催予定の最終予選で決まる。

慶応高校時代の友成晋也さん(提供:JーABS)
慶応高校時代の友成晋也さん(提供:JーABS)
友成晋也氏(左から2人目)とナイジェリア野球・ソフトボール連盟の人のウチェ・オドゾール会長(同3人目)
友成晋也氏(左から2人目)とナイジェリア野球・ソフトボール連盟の人のウチェ・オドゾール会長(同3人目)