元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載中。19回目は「コリジョンをWBCルールに」です。

 NPBは、コリジョン(衝突)ルールについて、先日、新しい運用基準を適用すると発表した。

 新基準では、送球がそれてやむを得ず走路に入った場合は対象外で、ブロックしたかどうかを厳格に判断する。

 コリジョンについては、春先のコラムで捕手のけが防止が同ルール導入の本質で、極端すぎる現行のコリジョンは改善の余地が多分にあると話した。

 ルール改正は来季以降かと思っていただけにスピード感を持って、改正した点については評価したいが…。

 早速、注目していた場面が訪れた。楽天嶋基宏捕手が本塁クロスプレーの守備行為について、7月31日のロッテ戦で新基準のコリジョンルールで初の警告を受けた。

【状況】

 初回1死二塁、ロッテ角中の二塁内野安打の間に二塁走者岡田が本塁に突入。楽天の二塁手藤田からの送球が三塁側にそれ、タッチした際に走者と交錯。アウトの宣告後にリプレー検証が行われたが、コリジョンルールを適用せず、判定はアウトのまま。嶋には警告が告げられた。責任審判の森審判は「送球がそれたので仕方なく、自然の流れで走路に入ったという判断。衝突ではなく、結果的なブロックに対する警告」と説明。嶋は「警告は仕方ない。以前のルールならセーフだったと思う」と話した。

【私の見解】

 嶋の動作がセーフなら、もはやなんでもありに見える。完全に左足は地面につき、ホームベースは隠れている。仮にランナーの岡田が逃げ場所がなくタックルにいっていたら、ホームベースが隠れているから仕方ないで終わっただろうか? 捕手は送球によってはブロックして良い、ランナーはどんな状況でもタックルはダメ、ではない。コリジョンルールでは一方的な有利不利が出てはならないし、捕手がブロックするから、ランナーのタックルが起きていた事を忘れてはいけない。今回のプレーでより一層、選手もファンもどこまでがセーフでどこまでがアウトなのか、わからなくなってきた。審判の裁量によって変わる可能性のあるルールはもはやルールではない。

 コリジョンルールはどこに向かっているのだろうか。

 視点を変える。2011年に導入された統一球は、球団間で使用するボールが異なることで公平性が損なわれる点を疑問視、さらに当時の加藤コミッショナーがWBC連覇後から、ボール統一の必要性を説き、WBCや五輪などの国際大会も視野に入れて12球団が足並みをそろえた。

 結局、統一球は反発係数の大きいボールに勝手に切り替えていたことで“物言い”がついたが、公平性と国際試合を見据える考え方自体は悪くないと思う。

 日本のコリジョンも統一球にしかり当初の捕手のけが防止は一義のまま、国際試合に視野を置く必要があるのではないか。

 2006年にWBCに出場した。当時はけん制とストライクゾーンにちょっぴり違和感があるくらいで、あまり気にすることもなかった。ストライクゾーンについては「メジャーは広い、広い」といろんな方から言われ、覚悟を決めさせられていたせいか? 日本と比べ内角に厳しく外にボール1、2個あまい程度の感覚で対応できた。

 けん制については、どちらかというと日本が厳しく、予選の段階でボークにならないケースをおもに走者が見直し大した問題ではなかった。

 しかし、来年のWBCではこれまで存在しなかったコリジョンやゲッツー崩しのルールが取り入れられる可能性が高い。

 WBCルールを知らないまま、国内でコリジョンを新運用したのでは、厳格にルールを守る日本が本番で損をする可能性は高い。「日本ルール」を厳格に守っていたところ本番ルールが実は緩くて、許容範囲を自ら狭めていたという事態が懸念される。

 統一球は、国際大会を視野に入れていたと話した。コリジョンはWBCルールに整えないのか。国の威信をかけた戦いで、捕手への走者のタックルはどこまでが反則にとられないのか。捕手のブロックはどこまで許されるのか。大会ルールをチーム日本は押さえているのか、準備をしているのか? 選手選考も大事だが、一発勝負のWBCでスキを見せたら負ける。

 ルールでのトラブルとは少し異なるが、国際大会では信じられないことが起こる。2006年3月12日、アナハイムで行われたWBC2次リーグの米国戦。3-3の8回1死満塁、岩村の左飛で、三塁走者西岡がタッチアップで生還。だが米国監督が離塁が早いと抗議し判定が覆った。王監督の球審への猛抗議も実らなかった。ある米紙は「陰謀」などと判定を批判したがあとの祭り。世界一になったから結果オーライだが、敗退となれば明暗を分ける「アナハイムの悲劇」となっていた。

 コリジョンでは、メジャーのほうが先行している。普通に考えてWBCを日本ルールでやるはずがない。いらぬ心配と言われる人もいるかもしれないが、メジャー方式で統一するのか、どの基準なのか分かるものなら知っておいて損はない。WBCまであと8カ月。先行するメジャーのコリジョンとさらにはゲッツー崩しルールまで含め、侍ジャパン運営側は渡米してでも勉強してくる必要があると思う。

 国際大会で勝つための地盤固めで、国内もWBCルールに早く合わせたほうがいい。もっと言えば、ハード面でWBCルールを手本にする以上に現場、審判を含めた意識付けのソフト面の強化も大事になる。

 来年のWBCは2020年に競技復活となった野球・ソフトで成功を収めるためには好成績を収めねばならない国際大会。コリジョンを新基準でやるというのなら、早めにWBCルールでやってみてはどうだろうか。

 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「サトのガチ話」)