日本シリーズ第6戦の8回裏、代打に向かう広島新井貴浩(2018年11月3日撮影)
日本シリーズ第6戦の8回裏、代打に向かう広島新井貴浩(2018年11月3日撮影)

見応えがあった日本シリーズも終わり、これで18年のプロ野球はすべて終わりました。日米野球はありますが。

それにしても面白かったのはMVPをソフトバンク甲斐拓也捕手が獲得したことです。甲斐はバットでは6試合で2安打0打点でしたが、なんといってもその強肩というか盗塁を狙った広島の走者をことごとく刺す姿は本当に強烈でした。

捕手が強肩でシリーズMVPに輝くのは日刊スポーツの記録メモにもあるように「史上初」のことだそう。

このシリーズは広島OBのレジェンド・黒田博樹氏らと観戦したのですが、黒田氏をはじめ、記者席のほとんどが甲斐が刺すたびに「おいおい。ホントかいな~」などと言っていました。

第6戦中には「甲斐がMVPを取ったりして」みたいな話になっていましたが、それが実現した形です。

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さて、このシリーズ、プロ野球ファン注目の話題は広島新井貴浩内野手でした。今季限りで現役引退を決めており、最後にどんな活躍をしてくれるのかという期待を集めました。

しかし第6戦で代打に出て遊ゴロに倒れるなど、結果は4打数0安打。スタメン出場もなく、数字的にはいいものを残せませんでしたが、最後まで全力プレーでファンを沸かせました。

その新井の出しどころについては、広島緒方孝市監督も苦労したと思います。2-0の接戦とはいえ、途中から広島の敗色濃厚だった第6戦。新井をどこで出すのか。それが注目されていました。

ハッキリ言えば、好機で出してこその代打でしょう。当然、主軸打者のときは代打は出ません。しかし第6戦で、広島にそういう場面は訪れませんでした。とはいえ現役最後になるであろう試合で、マツダスタジアムで、新井を出さないわけにはいかない。どこだ。どこで出る。黒田氏を含め、そこに注目していました。

そして8回です。この回の先頭打者、7番左翼でスタメンだった野間峻祥の代打で新井は打席に立ったのでした。結果は先ほど書いたように遊ゴロ。それでもファンは喜びました。

しかし。あまのじゃくの当方としては、野間に聞いてみたいことがありました。

「あそこで代打を出されたことをどう感じた?」。そういうものです。

主軸には代打は出さないと書きました。出すなら投手、下位打線のところでしょう。その意味では先頭打者とはいえ、この試合で2打数0安打だった野間のところで、というのは常識的な線です。しかし5戦目までに5安打していた野間にしても「ここは逆転に向けて、やったるで」という思いはあったはずです。

そういう意味であのときの気持ちを少し聞いてみたかったのです。

「う~ん。新井さんがボクのところで代打に出ていただいたのは、よかったと思いますね。でも自分で打ちたかったというのもありますよ。そこは野球選手ですから。う~ん。難しいですね」

関西人でハキハキした野間は、やや難解な、答えの困るえたいの知れない質問に戸惑いながらもしっかり答えてくれました。

そんなことを聞いたのは、もちろん偶然なのですが、代打が野間のところだったのには意味があると思うからです。

新井が広島に復帰したのは14年オフ、15年シーズンでした。古巣で最後の4年間を過ごしたことになります。

そして野間は14年のドラフト1位、15年のルーキーです。つまり野間は新井のいる広島しか知らないことになります。

ベテランから若い世代に、チームへの、ファンへの思いをつなげていくことがカープ最大の特徴だと思っています。

どんな場面でも代打を出されない中心的な野手、主軸打者になること。それが「代打・新井」を出された野間が、来季以降に目指す姿だ、と勝手に考えているのです。

左前安打を放つ野間峻祥(2018年10月27日撮影)
左前安打を放つ野間峻祥(2018年10月27日撮影)