交流戦が分岐点になる! とここで書いてきた。うまくいけば順位が大きく動く。逆なら先の見通しは、ますます暗くなる。このどちらかだったが、阪神はうまく乗り切った。

6月12日、オリックス戦の戦いぶり、それは強さがあふれていた。交流戦全日程を解消し12勝6敗でのフィニッシュ。一気に借金を6個も返済した。先に触れたように最下位を脱出。さらにAクラス3位は目の前。2位巨人との差も現実的に届きそうなところにまでもってきた。

ただし首位を走るヤクルトとは、12.5ゲーム差。阪神を上回る強さで交流戦をクリアし、ここだけは厳しい数字が残っている。それにしてもヤクルトの戦いはすごい。村上、山田がドンと構え、脇を固める選手もしっかりと役割を果たしている。投手陣もセットアッパーからクローザーが万全の体制を敷き、崩れる気配はまったくない。

さあレギュラーシーズン再開からタイガースのさらなる巻き返しはあるのか。ヤクルトとの差を詰め、ミラクルが起きる可能性は? そこで阪神が動いた。僕も何度も書いてきたが、ようやく新外国人野手の獲得に着手。その名が明るみに出た。

これは当然の策である。マルテが故障。もうひとりのロハスは相変わらず。6月12日のゲームでは8番の打順だった。高待遇で迎えた外国人が8番を打つ。これってどうなんだ。韓国プロ野球での実績は申し分のないものだった。しかし、それをうのみできない壁があった。数年前のロサリオ、そしてロハスも日本野球に順応できない。そこを見極めるのも、獲得にあたった渉外担当の役目のはずだが…。

さて、その新外国人候補アデルリン・ロドリゲスは、日本球界に在籍していたとのこと。2年前にオリックスにいたのだ。この記事を読んで思った。今度は失敗できないという慎重な対応がそこに出たのか。少しでも日本の野球を経験していることのメリットに着目した。僕は今回の獲得内定報道をそう捉えていた。

マイナーリーグでかなりの長打力を示している右打者。彼がこのまま入団し、阪神の救世主になれるかどうか。日本野球経験者を選んだことに、納得はしているが、監督の矢野は一体、どういう起用法を考えるのか。そこが大いに気になる。

ロドリゲスは主に一塁を守り、三塁、外野もこなせるという情報がある。となれば阪神ではどこを守らせるのか。ポジションがポイントになることはいうまでもない。

交流戦で阪神が好調だった要因は投手陣のがんばりと、打線の活発化にあった。特に4番佐藤輝、5番大山の活躍が、すべてチームの勝ちに結びついていた。この2人のポジションは佐藤輝が三塁で、大山一塁。これでかっちりと固まった。マルテが離脱していることもあるが、大山を一塁に固定したことで、攻守の形ができあがった。それまでは大山を外野で起用するなど、僕には理解できない起用法で矢野はしのいだりしたけど、今の形を壊す必要性はなくなった。

相手の先発投手によって、佐藤輝をライトにしたりすることもあるが、そろそろ今の一、三塁を固定すべきだ。相手が右であろうが左であろうが、動かすようなバッターではない。この2人のよさを存分に出さすために、もうポジションをいじることはない。

となれば次の問題が出てくる。ロドリゲスをどこで起用する? 獲得がこのまま成功すれば、当然、ベンチは彼を使う。最初は代打で、となるかもしれないが、先発で使うなら外野。この一択になる。本職が一塁ということであっても、大山をまた外野になんて論外。さらに大山を三塁に戻し、佐藤輝を右翼。これも反対である。

当たり前のことだが、今後を考えれば佐藤輝、大山ありきで考え、進めていくことを前提にするべきなのだ。ロドリゲスのバッティングに期待するのはいい。だが、チームのできあがった形を崩してまで配慮することはない。そのあたりを矢野はどう頭に描くのだろうか。獲得後の注目点はロドリゲスのポジションにある。(敬称略)【内匠宏幸】 (ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「かわいさ余って」)