田村藤夫のファームリポート

巨人とソフトバンク、3軍戦に見えた熱量/田村藤夫

<ファームリポート>

日本ハム、ロッテ、ダイエーで21年間の選手生活を送り、その後ソフトバンク、阪神、中日で2軍バッテリーコーチを通算21年間(うち1年間は編成担当)を務めた日刊スポーツ評論家・田村藤夫氏(60)が、27日に行われた3軍戦巨人-ソフトバンク(ジャイアンツ球場)を取材した。育成面で突出して球界をリードする両球団の選手育成の現場をリポートした。

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3ケタの背番号がどんどん打席に入ってくる。投げる投手は3軍戦とはいえ、ソフトバンクがバンデンハーク(35)に、巨人が新外国人のディプラン(26)。そして巨人のオーダーにはパーラ外野手(33)も名を連ねている。先制アーチを放ったのはプロ2年目の増田陸内野手(20)だった。

試合は7イニング制で巨人が増田陸のソロで1-0としたが、両チームが放ったのは5安打ずつ。投手陣のレベルが高かったのか、バッティングについては両チームともちょっと寂しい感じがした。

しかし、ネット裏に目をやると、各球団の編成担当がずらりとそろっていた。見覚えのない編成担当もいたが、私が知る限りでは巨人、ソフトバンク、楽天、日本ハム、ヤクルト、中日、ロッテなど総勢15人前後もいた。育成選手でこのまま契約が切れた時、戦力になり得る人材を発掘する狙いなのだろう。

今年だけで巨人では5人、ソフトバンクは3人が、育成選手登録を抹消して支配下選手へ移行をしている。それでも今現在、巨人が21人、ソフトバンクも21人の育成選手を抱える。楽天15人、オリックス14人で、その他の球団の育成選手は1ケタ。いかに巨人、ソフトバンクが育成選手に投資をしているかが分かる。

ソフトバンクは3軍選手に試合をさせるために、こうして東京まで足を運んでくる。これだけでも相当な力の入れようだ。今年は新型コロナウイルスの影響で中止になったが、韓国遠征も継続して行ってきた。私もソフトバンクのコーチをしてきた時に、3軍制を敷くチームの選手層の厚さを実感したが、こうして客観的に見ても、エネルギーの熱さを感じる。

巨人も近年は力を入れてきているが、私の率直な感想としては3軍制についてはソフトバンクに一日の長がある。それは千賀、甲斐が育成出身として力をつけ、1軍どころか球界を代表する選手に成長した実績が、3軍制の存在意義を証明しているからだろう。

巨人もこの3軍制によって、選手層の厚みをどんどん増している。この日、1軍での中日戦でウレーニャ内野手(21)が初ヒットを放っている。オープン戦でアピールしたモタ外野手(24)、この日3軍戦で先発したディプランと、次々に育成から支配下選手に昇格している。

くしくも両球団ともリーグ首位。それも、この熱量と無関係とは言えないだろう。育ったらもうけものという感覚より、必ず磨けば光るという経営方針が、両球団にあるのではないかと、グラウンドの戦いを見ながら感じた。

そんな中、非常に印象に残った選手がいる。育成選手ではないが、巨人のプロ6年目の戸根千明(27)。昨年まで通算120試合に登板し3勝2敗2セーブ、防御率3・52の成績を持つ投手だ。

23日のプロ・アマ交流戦、ロキテクノ富山戦で野手として対外試合初出場したばかり。その試合では3打数無安打だったが、この日の3軍戦で3打席で2打数1安打。野手として記念すべき対外試合初ヒットを放った。

ライトフライ、四球、そしてレフト前ヒット。スイングは野手のようだ。鋭いスイングが光ったし、2打席目のバンデンハークから奪った四球も、よくボールを見ていた。第3打席はフルカウントから2球変化球をファウルで粘ってから、外寄りのストレートをレフト前に運んだ。この打席では低めのボールに対して、打ちに行きながらボールを見極めてスイングを止めており、野手としての能力も垣間みられた。

ただし、野手のセンスがあって、打球を飛ばす能力があっても、克服しなければいけない課題はいくらでもある。これから戸根が対戦する投手のレベルはどんどん上がっていく。すぐに打てるようになるか、と言われればそれは絶対にない。レベルの違いは絶対にある。

その中で、新しい課題が見つかり、それをひとつずつ克服していくしかない。野手として入団しながら、1軍に出場できずに退団していく選手はざらにいる。それを考えれば、戸根の決断には、心の中でエールを送らずにいられない。

育成から支配下登録を目指すもの、故障や不調から1軍復帰を狙う外国人選手、そして野手転向という新しいチャレンジをはじめた投手。みんな目指すは1軍での晴れ舞台。1軍から遠く離れた3軍戦に、戦力を高めることに妥協しないプロ球団の現実を感じた。(日刊スポーツ評論家)

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