本塁打20発。昨秋の近畿王者、天理(奈良)が昨秋の公式戦で放った数は、今春のセンバツに出場する32校の中で最も多い。

天理が練習する天理市の親里球場。選手たちは「天理」と書かれた黒と白の細く長いバットで、ティー打撃を行い、その後普通のバットでフリー打撃へと向かう。力強いスイングで、強い打球を飛ばしていた。

中村良二監督(51)は「軽いバットを振るとキレが出る。スピードを出す筋肉を速く動かす。その速筋を(フリー打撃で)そのまま使える」と説明する。近鉄、阪神でプレーした中村監督は、現役時の経験を生かしている。重たいマスコットバットを30回振った後と軽いバットを30回振った後で、試合用バットでスイングスピードを計測したことがあった。「軽いのを振った後の方がヘッドスピードが速かった」と驚いたという。

高校生に重たいバットを振らせて、けんしょう炎になることを避ける意味もある。「軽いとたくさん振れる。振り回されないので、自分の形もつくりやすい」と説明する。奈良の用具メーカーMR社にオーダーしたロングバットは90センチで重さは850~900グラム。試合用の金属バットは930~950グラムなので、少し軽いくらいだが、長いから扱いが難しい。神宮大会での2発を含む4本塁打の瀬千皓外野手(2年)は「軽い分、強くボールに当てないとロングティーでも飛ばない」と話す。

軽いバットにも重いバットにも、どちらにも練習の効果、利点、欠点はあるだろう。指導者たちが経験や学びから、さまざまな指導法を作り、工夫していく。時代によっても変わっていくだろう。今後も多くの指導者の「味」を取材していきたい。【石橋隆雄】