履正社(大阪)が来夏の甲子園出場に向けて、長い冬を迎えている。この秋は秋季近畿地区大会大阪府予選3位決定戦で公立校の山田に1-2と逆転負け。本戦に進めずセンバツは絶望的となった。

エース左腕・渡辺純太投手(2年)が9回に2点を奪われた。「勝っていた試合。流れで負けてしまった」。先頭を出し、さらに四球でピンチを広げたことを敗因に挙げた。

阪神井上広大外野手(19)らがいた2学年上は19年春夏甲子園出場。夏は同校初の全国制覇を果たした。1つ上はDeNAドラフト4位小深田大地内野手(17)ら同校最多の3人がプロへ。夏も3年生だけで戦った大阪独自大会や甲子園交流試合と無敗で終えた。

1年秋からベンチ入りし、中止となった春のセンバツ、夏の甲子園交流戦で、2年生でただひとりメンバー入りしていたのが渡辺だった。「前のチームの経験は自分だけしかしていない。ちゃんと生かして自分が引っ張っていかないと勝てない」。役割は十分に分かっている。

180センチの大型左腕は、高校に入ってから腕をしっかり振ることを重視しているうちに、元レッドソックス岡島のようなノールック投法となった。「腕を振ることが大事。この冬にフォームを固定したい」と、独特な投法を固める。

11月23日、今年最後の京都成章との練習試合(履正社グラウンド)では6回1失点も、前日に5回投げた疲れの影響を感じ、体の弱さを自覚した。最速は138キロだが「あと12キロアップを目指します」とこの冬に徹底的に体を鍛え150キロへの大幅急速アップを目指している。「まだエースというのが分かっていない。(今が)見直す時間。夏に圧倒的に抑えられる力をつけたい」と、エースとしての誇りと意地を口にした。

新型コロナウイルスのために活動停止で2カ月練習合流が遅れた1年生も、ようやく力を発揮。チーム内の競争も激しくなった。秋敗れた時は「自主性があまりなかった」と渡辺も感じていたチームだったが、選手たちだけのミーティングの時間などが増え、選手ひとりひとりに自主性が芽生え始めている。

岡田龍生監督(59)は「このチームは真面目な選手が多い。課題は多いが、楽しみ」と、成長を期待する。渡辺が言う「圧倒的な力」で、夏は必ず激戦区大阪の主役になる。【石橋隆雄】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

◆渡辺純太(わたなべ・じゅんた)2003年(平15)10月17日生まれ。兵庫県宝塚市出身。美座小3年から宝塚リトルリーグで野球を始める。宝塚中では神戸中央リトルシニア。履正社では1年秋からベンチ入り。最速138キロ。変化球はカーブ、スプリット、チェンジアップ、カットボール。50メートル走7秒0、遠投90メートル。180センチ84キロ。左投げ左打ち。

履正社・渡辺純太投手(2020年11月23日)
履正社・渡辺純太投手(2020年11月23日)