DeNA対阪神 9回表阪神2死一、三塁、近本光司は左越え3点本塁打を放つ(撮影・奥田泰也)
DeNA対阪神 9回表阪神2死一、三塁、近本光司は左越え3点本塁打を放つ(撮影・奥田泰也)

横浜スタジアムの神様はよほど阪神のことが好きなようだ。9回、DeNA山崎康晃の失策があって近本光司の逆転3ランか。1回には4番・大山悠輔の先制弾も出た。DeNA相手に空中戦を制した形だ。「阪神は横浜で息を吹き返す」とブツブツ言っていたというDeNAの指揮官ラミレスもつらいだろう。

とにかく横浜に来ると阪神ナインは元気が出る。分かりやすいデータにこんなものがある。昨季、阪神ナインが横浜スタジアムで放った本塁打は20本。甲子園すべての試合でマークした本塁打とまったく同じ。試合数を考えれば、これはとんでもないことだ。

昨季の勝敗も阪神の10勝3敗。敵地なのに伸び伸びプレーし、打線もつながることが多い。甲子園で巨人に3連敗を食らって「希望は得意の横浜スタジアムか」と思って横浜に乗り込んだ。そんな期待をしてもダメだったりするのだが、見事な逆転勝利で3連勝ときたではないか。

それにしても。横浜で打てるのになぜ甲子園では打線が沈黙するのか。実はマツダスタジアムでも阪神打線はまずまず打つのだ。相手投手との兼ね合いもあるけれど甲子園で打てない傾向はずっと続いている。試合数がもっとも多い甲子園で打てなければ、上位進出はおぼつかない。

メディア、虎党だけでなく現場でもその思いは同じのようだ。横浜の連戦中、ヘッドコーチの清水雅治と話していると、こんなことを言った。

「横浜の室内で打者に投げたりするんですけど、みんな、振りがいいんですよ。コンパクトというか、ムダのない、いいスイングをする。それが甲子園での試合前の打撃練習だと感じが変わるんです。やっぱりリキみのようなものがあるのかな、と。だから今度、甲子園でも室内で打たせてみようかと考えているんです。全員じゃないけど」

清水は指揮官・矢野燿大の望みで阪神にやってきた。侍ジャパンでコーチを務めるだけに独自の理論があるがタテジマを着るのはこれが初めて。内部で見えなかった何かが分かるとすれば、頼もしい。

個人的には甲子園で活躍できる選手が「本物」だと思っている。広く、風にも影響される球場。選手個人の実力差が明確になる場所だ。だから発展途上の選手が多い阪神が甲子園で勝てないのは不思議ではないと感じている。

しかし「甲子園で打てん。勝てん」と言っているだけでは仕方がない。何か工夫してほしいと思う。いいと思えることはドンドンやっていけばいい。育成・改革が必要なチームであることは間違いないのだから。(敬称略)

DeNA対阪神 1回表阪神2死二塁、先制の2点本塁打を放つ大山(撮影・河野匠)
DeNA対阪神 1回表阪神2死二塁、先制の2点本塁打を放つ大山(撮影・河野匠)