「糸井は打つの初めてかな?」。キャンプ2日目。ランチタイム特打で打球を高々と飛ばす糸井嘉男を見て、思わずつぶやく。途端に周囲の若い虎番記者連中からバカにした様子で声がかかった。「きのう(1日)も打ってましたやん。何を見てますのん」。
そうか。前日はボーアの打撃練習に夢中だった。同じタイミングで打っていた隣の糸井に気がつかなかったのか。暖かいとボ~ッとしがちだ。だが気候はあまり関係ない。結構ボ~ッとしています。とにかくよく飛ばす糸井に目を見張った。この日の特打での柵越えは11本だとか。これは外国人を含めてトップらしい。
言い訳をさせてもらえれば糸井の動きはなかなか独特だ。ベースランニング練習など全体メニューには入っていない。打撃練習だけひょっこりとグラウンドに姿を現す。だから気がつかなくても仕方がない…訳はないが。いずれにしても深く静かに潜行している。
よう当たってるやん。外国人よりオレの方が打つわ~って思ってるんちゃう? 自身マークしていないシーズン20本塁打を狙ってる? 関西人同士の気安さで糸井に聞いてみる。
「(外国人より打つって)そんなん。思ってませんよ。20本って? いや今年は50本はいくかな。ボーアは40本やな。うん」
思ってるやないか。それだけで90発。楽しみ過ぎるやないか。にんまり笑う糸井を見て、思った。
50発はともかく、今季に勝負をかけているのは間違いないところだろう。オリックスからFAで移籍し、今季が4年契約最終年。昨年10月には左足首を手術し、復活にかける今季が重要だと思うのは当然だ。
「全体メニューもみんなといっしょにやってやれないことはない感じだけど。やっぱり慎重になってるんでしょうね。もちろん、今季ダメなら…って思っているでしょうから。今はいい顔してますよ」。日本ハム時代から糸井を指導していたヘッドコーチの清水雅治はそんな見立てを示した。
自主トレでもダッシュなどをしていたようだし、万全な状態には近づいている様子だ。それでもじっくり仕上げていく。ベテランなら、それも調整としていいだろう。
新加入の助っ人、若手の底上げ…。今季の阪神、楽しみは多いが勝利に向けて話が早いのは福留孝介と糸井の2人が暴れることなのは言うまでもない。(敬称略)




