猛虎の指揮官・矢野燿大はキャンプ打ち上げでキャンプのMVPに高山俊を挙げた。同感である。高山の必死さは目立っていた。でも同じでは面白くないのでこちらはこちらで名前を挙げさせてもらうとすれば、あえて梅野隆太郎と言いたい。何がよかったかと言えば、それほど目立っていなかったところの評価だ。

「マルチポジション」を理想に矢野はチームに競争原理を持ち込んでいる。それはいいことだ。だが裏を返せば「ここのレギュラーはお前だ」と言える選手が決めきれない面もあるのではないか。そんな中、そのレベルから脱しつつあるのが梅野だろう。

昨年の同時期、矢野は「正捕手は白紙」としたが、さすがに今は違うと思う。坂本誠志郎もいいが、やはり正捕手は梅野で揺るがないだろう。キャンプ中の扱いもそんな感じだった。

梅野もそれを理解し、首脳陣へのアピールを目的とするキャンプではなく、シーズン開幕へ向け、ピークを上げていくためのキャンプにしていた。いわゆるレギュラーのそれである。

「自分で考え、その日にやるべきことはやってという感じでしたね。あえて練習量を落とす部分も、正直、ありました。長い時間、練習やって評価を受けるというのも違うと思うので」

梅野もこちらの見方を否定しなかった。大事なのはキャンプよりシーズンなのだから当然。そんな梅野は今季について曲げない目標を掲げようとしている。それは「3巡目対策」だ。

「先発投手が自分の仕事をできるかできないかは試合の流れによるけれど粘れたと思うときは勝つ可能性が高いんですよ。ゲームセットになるまで粘る試合をつくっていく。そのためには3巡目ですね。打順の巡りで3巡目って、めちゃめちゃむずかしいんですよ。そこを乗り切るか乗り切れないか。接戦をものにできる展開に守備側としてもっていきたいですね」

抑え投手が目立つのが最近の阪神のパターン。しかし先発を1イニングでも長く、というのが梅野の狙いだ。未知数とはいえ、ボーアらが加入し、1発で試合の流れが変わる可能性も増えた。だからこそ「粘り」「我慢」を梅野はキーワードとした。

25日には練習終了後、室内練習場で黙々と投げ込む姿があった。期待の若手から主力へ。梅野の成長は阪神のレベルアップに欠かせない。(敬称略)